「だからさ、帰国子女が悪いわけじゃねぇんだって。帰国子女であることを自慢したり、それを理由に相手を見下したりするのがダメなんだって」
「すみません、生4つお願いします」
「別にさ、グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国で暮らしてたのがすごいってのは分かるよ?でもさ、日本には日本の良さってもんがあるわけよ!」
「イギリスね」
「すみません、生1つ追加で」
「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国には、グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国の良さがあるのかもしれない。だけど、それを俺たち日本人に押し付けんなって言ってんの!」
「イギリスね」
「すみません、生もう2つお願いします」
「紅茶はうまいかもしれないけど、フィッシュ・アンド・なんとかだっけ?グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国だって、飯はまずいって話もあるじゃん!日本の方が美味いっていうわけじゃないよ!?だけどさ、グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国と日本、双方認め合おうって!そういう視点なわけよ!言いたいことは!」
「イギリスね」
「すみません、生4つお願いします」
この前、晩酌しながらふと学生時代の飲み会を思い出した。あのとき一緒に飲んでいた仲間のひとり、カシワヤ(仮名)は、なぜあれほどまでに正式名称を使い続けていたのだろう。
理由はまったく分からない。というのも、我々に解明する気が一切ないからだ。
そして今、カシワヤどこにいるんだろう。学生時代のあの飲み会から十年以上経ているが、全く動向が掴めていない。音沙汰もない。
この理由は明白だ。というのも、我々に解明する気が一切ないからだ。
あと学生時代の我々、いくらなんでもビール飲み過ぎ。
【正式名称】