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朱雀4

この街は、“終わりゆく街” だと感じる。


外から見てもすぐに分かるほど、家屋や集合住宅には空室が目立っている。

街を歩いていてすれ違うのは、ほとんどが高齢者だ。


近所の小学校はそろそろ廃校になるらしい。

休日の昼間、シャッター街がこれほどまでに静かだとは知らなかった。


行政がどう動いているのか、正確なところは分からない。

けれど、肌で感じる。この街は、確かに “終わり” に近づいている。


それでいい。いや、それがいい。


だから私はこの街へ移住を決意した。


もう、何も始まらなくて良い。

変わる必要なんて、どこにもない。

ただ、緩やかにそこに在るだけでいい。


さあ、存分に楽しんでいこうじゃないか。

終わりゆくことが決まっている——その寂しさを。

終わりゆくことが決まっている——その静けさを。


終わりゆくことが決まっている——その、仄かな虚しさを。


【終わりゆく街】

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