一同の中央には、堪え切れずにすすり泣く、若き女性。
村のしきたり。生き血を欲する魔物の暴走を止めんと、毎年一人、処女を生贄として差し出す。その儀式の日が明日に迫っていた。
こんな風習、おかしいと誰もが思っているが、皆、口に出せない。
そう、そこまでに伝統の力は強いのだ。
しかし――。
「おら…もう許せねぇ!!」
立ち上がった人がいた。生贄の少女の父親だった。
「こんなしきたり、間違っている!絶対娘はやらねぇ!闘うぞ!おらは!」
父親はスマートフォンを取り出し、電話をかける。
電話の宛先は、もちろん、弁護士無料法律相談センターだ。
「…大丈夫です!問題ありませんよ!」
「本当ですか!?」
「はい!生贄なんてそんな人権を無視した野蛮な行動、許されるはずがありません!裁判にて、徹底的に戦いましょう!!大丈夫です!ご安心ください!娘さんは絶対に守ります!」
現代にて、伝統の力よりも強いもの。それが法律だ。
【法治国家】