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朱雀44

一同の中央には、堪え切れずにすすり泣く、若き女性。


村のしきたり。生き血を欲する魔物の暴走を止めんと、毎年一人、処女を生贄として差し出す。その儀式の日が明日に迫っていた。


こんな風習、おかしいと誰もが思っているが、皆、口に出せない。

そう、そこまでに伝統の力は強いのだ。


しかし――。


「おら…もう許せねぇ!!」


立ち上がった人がいた。生贄の少女の父親だった。


「こんなしきたり、間違っている!絶対娘はやらねぇ!闘うぞ!おらは!」


父親はスマートフォンを取り出し、電話をかける。


電話の宛先は、もちろん、弁護士無料法律相談センターだ。


「…大丈夫です!問題ありませんよ!」

「本当ですか!?」

「はい!生贄なんてそんな人権を無視した野蛮な行動、許されるはずがありません!裁判にて、徹底的に戦いましょう!!大丈夫です!ご安心ください!娘さんは絶対に守ります!」


現代にて、伝統の力よりも強いもの。それが法律だ。


【法治国家】

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