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第33話 『過去ってぇ、消せないんだってぇ』★

【150日目・リキッド視点】



 その日俺はゲーム配信をしていた。


『ち! ウゼえな……! けど、これで終わりだゴミがしねしねしねえええ!』


 対戦相手が妙にしつこくて苛ついたが、最終的にはボコボコにしてやった。


〈かっこよかった!〉

〈口悪すぎマジで辞めろ〉

〈すげえ最高すぎる〉

〈気分悪い〉


 コメントを見ながら笑う。

 そんな事言うんなら見るなよ。


 コイツ等は何も分かってない。

 自分たちが何をやっていて、どういう存在なのか。


 俺がちょっと刺激的な事を囁けばそれに群がってくる虫共。

 何も考えず刺激物舐めてうめーうめー言ってるやつ、叩きまくってかえって蜜の在りかを教えて広げてくれるやつ、全部俺の餌だ。


『みんなコメントありがとうな。すげーテンション上がったわ』


 そして、俺は抜け道で散々しゃぶりつくしたら、仮初の身体を捨てる。

 捨てた死体を蹴り続ける馬鹿どもを眺めながら、俺は本体に戻る。


『はっはっは、アンチ君もコメントありがとうな。でも、俺は俺のスタイルでやらせてもらうから』


 誰も分かっていない。俺が誰かを。馬鹿どもが。


 なのに、なんだか今日は苛つく。

 いつもよりコメント欄が荒れているせいか?

 ベトつく床が俺の苛立ちを倍増させる。


 ち。また、別のキャラで、どっか荒らしてやるか。

 それか、誰か適当に抱くか。


 ツブヤイッターで良さげな女を探す。


 ん? ツブヤイッターのトレンド、なんだこれ……がんばれV?

 V? Vtuberか?

 なにそれウケる? Vなんて頑張らなくても賢ければいくらでもうまくやれるんだよ。

 頑張る方がアホらしい。


 妙に苛つくそのワードを無視して、ツブヤイッターで女を見て回る。

 その時、電話がかかってくる。


 誰だ? え……これ、もしかして、警察か……? なんで……?


「はい?」

『〇〇警察です。鈴木力人さんですか?』

「え? あ、ああ、鈴木力人、ですけど……」

『ちょっとお伺いしたいことがありまして、お電話させていただきました』

「はあ?」


 その内容は、俺が未成年の女を無理やり襲ったっていう内容だった。心当たりは、ある。


「ふざけんな! 俺が、襲ったって証拠はあるのかよ! うるせえ! マジでクソだな! 日本の警察は!」


 俺は電話の向こうでなんかテンパってる警官を無視して切る。

 けど、まさか……どこからバレた?


「マジでやべえ……! なんでバレたんだよ……。ふざけんなよ! マジでふざけんな! クソが! どの女だ! どの女がチクりやがった! ふざけんなよ! ちょっと強引にJK襲ったくれえで俺の人生潰されてたまるかよ!!」


 直近で捨てた女だと、そーだがバラしたのか?! いや、アイツはそんなヤツじゃない。

 ずっと俺を馬鹿みたいに信じ続けて未だにメッセージ送ってくるような馬鹿で、俺がガキと繋がっていたかもなんて夢にも思わねえ馬鹿メルヘン女だ。


 可能性ありそうな女を探す。見つけて滅茶苦茶にしてやる!

 方法なんていくらでもある。有名配信者の力舐めんな!

 その時、また電話。うぜえ!


 マネージャーからだった。なんだよこんな時に!


「なんだよ! 今、それどころじゃ……!」

『は、配信……』

「はいしん……?」



『配信切れぇええええええええええええええええ!』



 俺は、パソコンに視線を向ける。


 クソみたいなコメントが俺にクソみたいに投げつけられていた。






 そして、その後、ほとぼりが覚めた頃、俺は何度も転生して、別の身体でVをやった。

 なのに、馬鹿どもが亡霊みたいに見つけてきやがる、俺の本体を。過去を。やらかしを。

 なんだよ、ふざけんな。なんで分かんだよ。特定班ウゼエ。

 過去の俺の発言が切り抜かれ、永遠に繰り返され続ける。

 昔の話だろ! ふざけんな!


 ふざけんな。


 ふざけんな……。


 もう、許してくれ。悪い。すまん。すみません。ごめんなさい。



 その後、結局、俺は、女に刺され、薄れゆく意識の中で思った。

 何度転生しても、業ってヤツは付きまとってくるんだなって。

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