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第7話

 無事加入手続きが終わり、私はギルド拠点に案内された。拠点はそれなりに立派で、内装も良い。ただ、大人数向けなので私たちだけじゃ広すぎる。


 椅子は全部で12席。だけど、そのほとんどが使われた形跡がない。セレスに聞くと最初は椅子の数だけいたらしい。


 しかし、ゲームのシステムが変更するのに連れて、引退する人が増えたようだ。セレスが言うには、脱退した人が戻る確率は低いらしい。



「セレス」


「なんですか?」


「このゲームにいる奴ら。ほとんどがNPCなんだが、理由わかるか?」


「そういえば、最近かなり増えましたね……」


「増えた?」


 セレスは一瞬暗い表情をした。元々いたギルドメンバーは脱退することを伝えずに抜けていって

、それは他ギルドでも同様なことが起こってるようだ。


「つまり、プレイ人口をNPCで補っている状況が続いている……と……」


「はい……。だから、新メンバーを入れるのも大変で……。新人プレイヤーが入って来ない以上このゲームは……」


「なるほどねぇ……。よし! クエスト行こう!」


「このタイミングで!?」


 まあ、悩んでたって仕方ない。その場で立ち往生している暇があるなら、行動をした方が手っ取り早いくらいだ。


 ちなみに、クエストはネットで調べてある。リアルタイムで表示される掲示板は、めちゃくちゃありがたい。これで今受注できる依頼を確認できる。


 一番気になってたのは、クリア難易度30の〝フィーバーバグ討伐〟。今の私は今朝のバトルでレベル15まで上がったから、なんとかなるだろう。


「フィーバーバグ……ですか」


 ガロンが興味深そうな顔をする。彼女はこのフィーバーバグについて知ってるのだろうか?


「たしか、フィーバーバグは火属性の小型モンスターで一番厄介と……」


「厄介?」


「はい。クリア難易度は30ですが……。実際にレベル30以上のプレイヤーが挑んだところ、手も足も出なかったとか……」


 そんなに強いのか。だけど、私なら簡単だろう。そうして、私たち三人はギルド拠点をあとにした。


 向かう先はクエスト受注所。そこでフィーバーバグ討伐の依頼を受ける。だけど、ここで問題が発生した。


「受注レベル自体が15以上ってマジかよ……」


「仕方ないのです。フィーバーバグはレベル制限が設けられているのです」


「そうか……。うーむ、今の私のレベルはまだ3だからな……」


 これでは受注ができない。だけど、セレスが回避方法を知っていた。


「じゃあ私が受注しましょうか?」


「本当にいいのか?」


「はい! 団長ですから!」


 セレスはカウンターの受付NPCに申請をする。その後私たちはチームを組んで、目的地へと向った。


 こういう抜け道的なものがあるのは嬉しいが、逆に巻き込まれ系のいざこざが起きそうだ。


 そこはしっかりと運営に報告しないとだが、この過疎世界、大丈夫なのか?


 着いた場所は平原。そこの洞窟がある場所だった。フィーバーバグはここにいるらしい。


 しばらくして、耳障りな羽音が聞こえてくる。ここの再現度は非常に怖い。まるで耳元に蚊が飛んでるみたいだ。


 奥の方から黒い影。近づくに連れて赤いフォルムが見えてきた。同じように赤い鱗粉を振りまいていて、近寄りづらい状況だ。


「あれがフィーバーバグか?」


「はい! 赤い蛾のモンスターです。皆さんあの赤い鱗粉で火傷状態になって、ゲームオーバーしてるみたいですよ」


「ふーん鱗粉ねぇ……」


 私は剣を装備する。初期装備のままなので攻撃力は低い。だけど、あくまでも使い方次第だ。最弱武器でも最強武器に変えることができる。


 まっすぐ走る。洞窟の壁を駆け上る。鱗粉が落ちてる場所の上。外れているところに行けば回避できると見た。


「ルグアさーん! 無茶だけはやめてくださーい」


 真後ろでセレスが叫んでいる、だけど、こっちはその声を聞いてる暇などない。身体が上下反転する。この体勢はゲームでも結構キツい。


 ちょっと特殊なコマンドで逆さまの状態になれることは、バグなのか初期仕様なのか。そこは正直どうでもいい。


 剣を振る。一発当てても倒れない。何発も当てないと無理そうだ。ここは強攻撃を連発しよう。


 だけど、逆さまの時の欠点は天井で待機するコマンドを常時送らないといけないこと。この体勢では強攻撃などできない。


 地上に降りる。案の定火傷状態になった。だけど、こういう状況の方が好きだ。


「ルグアさんが笑っているのです」


 ガロンがそんなことをつぶやく。私は初期スキルの波動でバッサバッサと敵を切り刻むと、あっという間に全滅できた。



「思ったよりも雑魚って感じだな。レベルは――今12か……」


「お疲れ様なのです!」


「ありがとうガロン」



 バトルも一段落したところで、私の体力ゲージが残りわずかになっていた。だけど、ギリギリのところで火傷状態が外れ、ゲームオーバーを回避。


 『ヒヤヒヤさせやがって』と思いつつも、私たちはギルド拠点へと移動した。

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