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第12話

 クリムを連れてクエスト受注所に着いた私たちは、そのまま予定していたクエストをクエストブックに登録した。


 クエスト名は全てボスの名前で割り振られている。小型エネミーではなく、ボス級の大型エネミーものだ。


 受注所の人がNPCで良かった。だけど、視線を感じるのは何故か。私は周囲を見回すと、多くの人がクリムを見つめていた。


「なんか……。見られてるな……」


「仕方あるまい。我の独断で仲間になったのだからな」


「それはそうだけど……。ま、今はクエストだ。クリムは泳げるか?」


「泳げ……るわけがなかろう。炎龍である我が水なんざ使ったら本領を発揮できんわい」


「だろうな」


 簡単に話したけど、異様な視線は増えるばかり。仕方なくクリムを掴んで抱えると、全速力で最初のクエスト発生エリアへ向かった。


 NPCから貰ったクエストマップは、効率的にクリアできる道順が記されている。1番近いのは、平原の中心部分らしい。


 そこは森にも近く、想像上では入り組んだ地形なのではと予測する。


〝灼鉄騎ラガード〟


 今このボスが特定の場所を燃やしているらしい。クリムにも情報を見てもらったが、本人でも手に負えないレベルの強エネミーらしい。


 しばらくして到着すると、そこには炎馬に跨った騎士の姿。業火を纏った出で立ちは、胸が高鳴るほど強そうだ。


 私はクリムゾン・ブレードを左手に装備すると、敵の動きを確認する。どう行動を起こすかを見るためだ。


 私が目を細めた時、シャリンという金属の擦れる音がした。『来る』。そう思った時には、敵の左後方をマークする。


 馬の後ろは危険だ。だけど、小回りが効きにくいのもまた事実。身体の向きを完全に変えるには、その場で数回以上足踏みさせる必要がある。


「ルグア殿。何をウダウダしている!」


「様子見ってやつだよ。むやみやたらに攻めても、返り討ちにあうだけだ。ここは真剣になる必要が……今だ!」


 私はラガードの隙を見つけ、猛ダッシュで斬りかかる。攻撃はヒットした。だが、刃が入らない。


 一旦退く。傷がついたところは、馬の右足だった。馬に当たり判定がないのなら、きっと本体である騎士にダメージを与える必要がある。


 次の隙を見つけ、再びダッシュ。今度は最上段からの切り落としを実行する。けれども、ダメージが入った手応えがない。


 ダッシュと後退を繰り返し、どうすれば本体にダメージが入るかを考える。


 今思い返してみれば、ラガードは私が受注したクエストで2番目の高難度クエストだ。


 私だって、低難易度から徐々に慣らしていくことはある。最初から強者と戦っても、敵わないことを知ってるからだ。


「クリム。上空から指示をくれないか?」


「承知!」


 クリムが上昇する。高度を上げた状態で地上を見る。視線で場所を固定させると、クリムが攻撃場所を教えてくれる。


 とにかくここを切り抜ける。私はそれだけしか頭になかった。ダッシュする。跳躍をする。


 大振りの一閃を与える。剣は騎士の鎧を砕いた。柔らかい肉質が見える。そこを重点的の攻撃して、体力ゲージを0にすればこっちの勝ちだ。


 森を見つける。ラガードに挑発を仕掛ける。簡単に引っかかり、私は森の中へと誘導した。


 深く目に優しそうな森は、ラガードの熱気で焼かれていく。こんなことも想定内だ。


 燃やした時に発生する煙。それで私の姿をくらませて、連続攻撃を仕掛ける。


「ルグア殿! 場所はわかるのかね?」


「問題ない。勘で動ける!」


「勘じゃと? まあ、良い。そやつのゲージは残りわずかじゃ」


 柔らかい肉質をピンポイントで攻める。最終的に馬から落ちた騎士を、滅多切りにした。


 作戦は成功。ラガードを討伐した私たちは、次に近い海へと向かう。先程クリムが言っていたように、彼は水中戦ができない。


 つまり、水中戦枠で登録したクエスト3つは私の完全なソロでやらないといけない。


 問題ない。地上戦よりも水中の方が得意だ。運動音痴で体力がなかった私は、中学校まで水泳教室に通っていた。


 その時の感覚は嫌でも染み付いている。最終的にできるようになった泳法は、バタフライまでだったか?


 だから、水中戦も得意な戦場だ。クエスト発生エリアに着くと、私は装備を身につけたまま海へ飛び込む。


 普通なら装備は外す。重荷デバフで移動速度が落ちるからだ。けれどもそれだと、防御力も下がってしまう。


 というわけで、私はそのまま次のボス〝タイラン〟がいる岩礁へと向かった。

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