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5.芭摺の事件と「ゴンゾウサマ」の関与についての考察

 さて、収束するかと思われた「ゴンゾウサマ」による怪死事件だが、思わぬ形で再度起こることとなる。そう、この論文のテーマでもある芭摺が絡む一連の事件だ。


 軍魔刑務所内での大量死ということで刑務所側の管理体制が真っ先に疑われたこと、後に逮捕されることになる保茂野がテレビメディア等を中心に槍玉にあげられたこと、雀部の事件から約50年もの年月が経過しており人々の記憶からとうに消え去っていたことなどさまざまな要素が関係し、いわゆるオカルト的な騒がれ方をすることはあまりなかったこの事件であるが、「ゴンゾウサマ」の事件としての要件をしっかりと充たしている。


 まずは被害者が祟りを受けることとなるきっかけについては明白だ。芭摺は某動画投稿サイトにおいて『旧穢栖出夷爺頭村跡地の祠を破壊してみたwww』という動画を投稿しており、その動画中では彼が金属バットなどを用いて祠を破壊する一部始終がカメラへ収められている。


 そして彼の死に方についてだが、一連の事件と同じく臀部を露出した状態での不審死となっている。


 だが、ここで「芭摺の死については保茂野という明確な被疑者がいるではないか」という反論が問題となってくる。実際に刑事事件としては、保茂野による犯行だとして処理されているというのが明確な真実ではある。


 だが、考えてもみて欲しい。「軍魔刑務所男性受刑者多発変死事件」の被害者は芭摺を含め実に80人にも及ぶのだ。そんな人数の受刑者全てに対して性的暴行を加えた上で殺害して回ることなど、はたして保茂野一人だけの力で本当に可能なことなのであろうか。なにか人知を超えたものによる介入、それこそ「ゴンゾウサマ」による祟りだと考えたほうが自然だとすら考えられないであろうか。


 刑事事件としての処理がすでに完了しているうえに、被疑者である保茂野氏も亡くなられているため、私がこのことを公にしたところで一般的な真実が覆ることはないだろう。だが、私はこの事件は、芭摺の蛮行によって解き放たれた「ゴンゾウサマ」による祟りであると、声を大にして主張しておきたい。



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