夜風が吹き抜ける広場で、篝火が不気味に踊っていた。
深冬は屈強な村の男たちに引きずられながら、内心で冷静に状況を分析しようとしていた。
「パニックになったらあかん。今は情報収集に専念して——」
でも、その思考は村人たちの異様な熱気に押し潰された。獲物を見る目。それ以外の何物でもない。
「これより、我らが偉大なるシラヌイ様の、新たなる『花嫁』を選定する神聖なる儀を執り行う!」
祠堂耀の声が夜気を切り裂く。白い神主服に身を包んだその姿は、まるで古代から蘇った死神のようやった。
深冬の他に二人の若い娘が引き出されてる。二人とも震えが止まらず、瞳に光はない。
「これは現実?小説の世界やないの?」
長老衆が古い祝詞を唱えながら三人の周りを回る。充血した赤い目、狂信的な光——人間の目やない。
威圧的な老人が深冬の前に立った。その視線が、首元のロケットペンダントに留まる。
「珍しい。このような『穢れ』に満ちた俗物を聖なる儀式の場に」
汚れた指がペンダントに伸びる。
「やめて!」
深冬は反射的に手を振り上げた。
「それは妹の——私の一番大切な——!」
この時、大地が唸った。
ゴゴゴゴゴゴ……!
地面が波打ち、篝火の炎が狂ったように暴れ回る。村人たちの悲鳴。パニック。そして——
「シラヌイ様がお目覚めになられた……!」
耀の声に恍惚と恐怖が混じってる。でも、よく見ると、その表情に複雑な感情が過ぎったような……。
「お怒りじゃ……新たな『花嫁』を求めておられる……!」
耀がゆっくりと振り返る。その氷のような指が深冬の腕を掴んだ。
「七瀬深冬。あなたが選ばれた。シラヌイ様に」
死刑宣告。
深冬は耀の腕を振り払い、鋭く睨みつけた。
「誰が!……あんたらの好きにはさせへんからな!」
関西弁が完全に出てしまったけど、もうどうでもええ。