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第5話

夜風が吹き抜ける広場で、篝火が不気味に踊っていた。


深冬は屈強な村の男たちに引きずられながら、内心で冷静に状況を分析しようとしていた。


「パニックになったらあかん。今は情報収集に専念して——」


でも、その思考は村人たちの異様な熱気に押し潰された。獲物を見る目。それ以外の何物でもない。


「これより、我らが偉大なるシラヌイ様の、新たなる『花嫁』を選定する神聖なる儀を執り行う!」


祠堂耀の声が夜気を切り裂く。白い神主服に身を包んだその姿は、まるで古代から蘇った死神のようやった。


深冬の他に二人の若い娘が引き出されてる。二人とも震えが止まらず、瞳に光はない。


「これは現実?小説の世界やないの?」


長老衆が古い祝詞を唱えながら三人の周りを回る。充血した赤い目、狂信的な光——人間の目やない。


威圧的な老人が深冬の前に立った。その視線が、首元のロケットペンダントに留まる。


「珍しい。このような『穢れ』に満ちた俗物を聖なる儀式の場に」


汚れた指がペンダントに伸びる。


「やめて!」


深冬は反射的に手を振り上げた。


「それは妹の——私の一番大切な——!」


この時、大地が唸った。


ゴゴゴゴゴゴ……!


地面が波打ち、篝火の炎が狂ったように暴れ回る。村人たちの悲鳴。パニック。そして——


「シラヌイ様がお目覚めになられた……!」


耀の声に恍惚と恐怖が混じってる。でも、よく見ると、その表情に複雑な感情が過ぎったような……。


「お怒りじゃ……新たな『花嫁』を求めておられる……!」


耀がゆっくりと振り返る。その氷のような指が深冬の腕を掴んだ。


「七瀬深冬。あなたが選ばれた。シラヌイ様に」


死刑宣告。


深冬は耀の腕を振り払い、鋭く睨みつけた。


「誰が!……あんたらの好きにはさせへんからな!」


関西弁が完全に出てしまったけど、もうどうでもええ。



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