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敗北の女神とキャノン砲
敗北の女神とキャノン砲
赤色の人
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年05月24日
公開日
3,778字
連載中
2025年5月18日、全世界のテレビ画面をジャックした謎の映像と共に「天界遊戯」の開催が告げられた。退屈した天界の神々が始めたこの遊戯は、各神が選んだ「使徒」と呼ばれる5つの命を戦わせ、最後まで生き残った使徒の神が「天界の覇王」として宇宙を意のままに操るという、理不尽極まりないものだった。 成島幸一もまた、この不条理なゲームに「使徒」として巻き込まれた一人。しかし、ゲーム開始を告げる無慈悲なカウントダウンが終わると同時に、彼は絶望的な現実に直面する。なんと、彼以外の使徒メンバー全員が、一瞬にして命を落としたのだ。 たった一人、生き残ってしまった幸一。一体、この絶望的な状況でどう切り抜けるのか? 神々の弄ぶ「天界遊戯」の裏に隠された真実とは? そして、彼の運命は――。

第1話『天界遊戯』

 地上に生きる人類よ、聞くがよい。


 我々、天界に君臨する至高の神々――風の囁き、星の巡り、破滅の鼓動、さらには雲の儚い形を司る者たち――は、永遠の虚無に漂う高みより、汝らに言葉を下す。


 我々は果てなき時の中で倦み、虚飾の宴に溺れてきた。


 甘美な菓子の味わいを競い、雲の柔らかさを論じる空疎な争いに時を費やし、ついに新たな興を求めた。


 それが「天界遊戯」である。汝らの世界から選び抜いた者たちを我々の駒とし、互いに争わせ、血と慟哭の舞台を眺めながら、酒杯を傾けるのだ。


 遊戯の掟は冷酷にして明快。


 各神は己の望む世界から五つの命を召喚し、「使徒」と名付けて神の力を与える。


 人間、獣、植物、あるいは名もなき存在――すべては我々の気まぐれ次第。


 彼らは死の闘技場に投じられ、最後まで生き残った使徒の神が「天界の覇王」となる。


 覇王は他の神々を従え、宇宙の理を意のままに操る力を得る。敗れた神は存在ごと消滅し、使徒もまた灰と散る。


 覇王に与えられる褒美は、汝らの目には滑稽に映るかもしれぬ。


 無限に供される菓子、雲の形を好みに変える権利、宴の席で最初の歌を歌う名誉――我々はこれを至上の喜びと見なす。


 だが、その裏に潜む真の力を見よ。


 覇王は宇宙そのものを掌中に収める。


 星の運行を乱し、時間の流れを曲げ、すべての命の感情を一色に染め上げることもできる。


 ある神は「銀河を炎の祭で彩る」と笑うが、それは無数の世界を灰燼に帰す所業に他ならぬ。


 人類よ、悟れ。


 汝らの世界は、我々の気まぐれな指先で選ばれた。


 使徒として召喚された者たちは、神の力を押し付けられ、否応なく殺戮の渦に投げ込まれる。


 汝らの苦しみは我々の愉悦となり、汝らの叫びは我々の笑い声を響かせる。


 だが、問おう。


 このような浅薄な神々の手に、宇宙の命運を委ねたのは誰か? 我々の遊戯が、汝らの存亡を左右する。


 この矛盾を、汝ら如何に受け止める?


 天界の遊戯は始まった。


 使徒たる者よ、足掻き、戦い、生き延びるがよい。


 争え。


 その先に待つのは栄光か、さらなる虚無か、あるいは全宇宙の崩壊か。


 天界の神々、総ての名において――――――。

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