千代子はたった一夜で、この人以上の人はいないと確信したのだろう。
愛の表現が上手い。日本人には無い特性なのだろうか。
全身で愛を表現する。
千代子は歓喜に何度も涙を流した。
それまでに経験したことのない歓びだった。
友人達から聞いたことはあったが、体験したのは初めてだった。
彼は3か月、しっかり働き、1か月は王国に行き、のんびり遊ぶ、その生き方をも千代子は気に入ってしまった。
いつもいつも几帳面にコツコツ働く、そんな生活よりずっと良いと思った。
歓喜の紅い花びらが何重にも咲いた。
千代子の頭の中は空っぽになり、ただ、ただ、歓びにうち震えて。
彼は、大丈夫?大丈夫? と。
千代子は一夜で夢中になってしまった。
仕事も辞めて、彼に付いて行こうと決心した。
千代子は昨年の誕生日に近くに住む祖母から亀をプレゼントされた。
手のひらにすっぽり入るほど小さ亀。
動物好きの千代子だっけれど、亀を飼うのは初めてだった。
よく育っていて、千代子が家にいると、のろのろヨチヨチ後を追ってくる。
祖母は亀を飼っていると幸福がやってくる、玉の輿に乗れるかもねと言っていたが、まさか、本当に玉の輿に乗れるとは思ってもいなかった。
要子は違和感がある。
コツコツ働くことを否定するなど、パパが可哀想だと、公務員として真面目にコツコツ働き、私達を育ててくれたのはパパの働きのおかげなのにと。
2階の自分の部屋に戻り、おかしな状況になってきている、ちぃねえちゃんの結婚の話に変化して。
ママも賛成しているようで。
ちぃねえちゃんとママは享楽的で、どちらかというと派手好き、、。
パパは何と言うだろうか。
一番ちぃねえちゃんを可愛がっていたはず。
要子は勉強していよう、あちらの話に興味は持たないようにしようと思ったのだが。
そうしている内に、要子の父親が帰宅し、王様も訪れ。
王様は要子から承諾の返事をもらうまでは毎日訪れると言っていたが。
(つづく)