クリスマスの前日に千代子とリッカルドの結婚式です。
日本からは家族だけの出席になりました。
あまりに急だった事もありますが、1週間後には、南洋の王国で要子と王様の結婚式ということで、
女側は簡素にしようと考えたと
建て前ではそのようになっていました。
要子は本音は、母親が面倒を避けただけと見抜いていました。
日本からイタリア、そして南洋となると、飛行機やホテルの手配だけでなく、何かと物入りでもあり、
それぞれに連絡を取るだけでも忙しくなります。
要子の母親は面倒な事は嫌うのです。
細かいことをテキパキ片付けるのは紀代子の得意とするところなのですが、
紀代子は動こうとしません。
教会で式を挙げ、リッカルドの実家は、
元々は日本でいう豪族のような家系で、ローマから南へ車で1時間程の広大な敷地に建つ古城のような建物でした。
そこでパーティーになりました。
千代子は美しかった。
誰もが美しさを絶賛しました。
要子達家族は全員和服にしました。
日本人らしく。
日本人としてプライドを持ってというところらしいですが。
着付けをするだけで母親は疲れ切っていました。
父親も紀代子も要子も自分で和服を正式に着ることは出来ません。
ちぃねえちゃんはウェディングドレスを教会からリッカルドの実家に入ると、
デザインの違うドレスに着替え。
要子は母親に私達も着替えたいと言ったけれど、無視されました。
王様もタキシードスタイルで出席していましたが、
父親が様になるなぁと嘆息するほどに、素敵でした。
紀代子はイタリアに入国した、その瞬間から、多くの男性に言い寄られていましたが、ツンツンと無視していて。
要子はなぜか可笑しくみていました。
要子はその日初めて王様と2人きりで話をして。
「お姉さんは美しい花嫁さんですね。
要子さんも、お着物 よーくお似合いです。
まるで、日本人形のようです。
大丈夫ですか?
要子さんも来週には花嫁さんになります。
疲れていませんか? 」
2階のテラスは広くて、要子の東京の部屋より広いほどでした。
王様は要子の右手を自分の両手で大事そうに包み、
「柔らかい、小さな手。
僕の宝物です。」
要子は王様は優しい人に違いない、キスしたり変な事は決してしない、良い人だと感じました。
それで、王様には本当の事を話すことにしました。