王様は庭を指差して、
「要子さん、紀代子お姉さんは彼と良い感じですよ。
彼は、要子さんのお宅に伺った初日から、紀代子さんに心惹かれていたようです。
僕はすぐ気付きましたが、
彼はビジネスでは強気で交渉しますが、自分の事はダメなようでして。
少しだけ、はっぱをかけてやりました。
彼と紀代子お姉さんは似たもの同士ですよ。
良いカップルです。」
ずっとツンツンしていた紀代子は、
鶯色の振り袖を着て、髪には揺れる簪を刺し、
黒いタキシード姿の王様より少し長身の王様の交渉人と顔を寄せ合って話していて、
上から見ると顔の表情までは分からないが、体全体が弾んでいて。
要子はふーん、そうだったのか、
それできいねえちゃんは、誰に誘われてもツンツン無視していたのかと。
素直に言えばいいのに、きいねえちゃんらしいなあと。
これで、三姉妹が一気にお嫁入りとなりそうで。
不思議な縁もあるものだと。
三姉妹揃って、王国の国民になることになる。
交渉人はドイツの人とかで。
要子の両親は、どんな思いなのだろうかと。
王様は、今夜は元女優の側室さんを帯同してきているので、
その側室さんと休まれるらしく。
要子は少しばかり寂しい感じもしたけれど、王様の望むようにしていようと決めた。
側室さんは必要なものなのだろうか。
元女優の側室さんは、とても美しい人で背も高く、金色の髪も長く、要子は自分とは正反対の、いかにも洗練された大人の女性のように感じて。
王様は同じベッドで寝るのだなぁと、少し羨ましくもあり。
きいねえちゃんは、王様は2人も側室を持って、けっこう好き者かもねと言っていたけれど、明日は王様に聞いてみようと思った。
どうして側室さんが必要なのか、また、王様は好き者なのかと。
ところで、要子の両親は、
なにやら晩婚になりそうだった紀代子まで、結婚しそうな雰囲気で、
それも3人が3人共に、日本以外の人と結ばれるようで。
嬉しい事というよりは、実際は、戸惑っていた。
夫婦2人だけになってしまう。
それも、外国へ嫁いでしまい。
少なくともあと4年間は末っ子の要子が日本で同居する予定で、
母親はなんとかその年数をのばせないものかと密かに考えていたが。
(つづく)