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第12話

 千代子は二十歳の誕生日に祖母からプレゼントされて以来可愛がってきた亀さんも、プラスチックの水槽状の飼育ケースにいれてイタリアまで持ってきていた。


 リッカルドは犬や馬を幼少の頃から飼っていて、生き物を大切にするようで、千代子が亀も連れて行きたいと言うと簡単に承諾した。     


 千代子にすると、膝の上によたよたと登ってきて、眠ってしまう亀さんを可愛いと思っているだけでなく、


祖母がマジナイのように言っていた(亀を飼うと幸福になる、女の子だと玉の輿に乗る場合もある)言葉が現実になり、


イタリアにも王国にも連れて歩こうと決めたからで。 


 亀さんを粗末にすると運が逃げていってしまうように思えてならなかったからで。


  リッカルド所有のジェット機なので、ましてや小さな亀さんなので、特にうるさい検査もなく入国できたのだが。        


 そして、要子と王様の結婚式に出席する為に、日本から来た千代子の家族全員、もちろん、リッカルド、交渉人、王様、王様の側室さん1名、側室さんの付き人は2機のジェット機に分かれて乗り込み、南洋の王国へ向かった。


日本では年末で人々は忙しい時期。 

空は青く、太陽が眩しく。 


 要子はスヤスヤ眠り込み、隣りに座っている王様の側室さんは、王様にカワイイヒトデスネェと要子の髪を撫でていて。


   後ろの席に座っている紀代子と交渉人は、要子であれば2人の側室と揉めることはないだろうと感じていた。


 紀代子は金髪のドイツ人の交渉人から、王様の2人の側室は年齢も同じ、共に元女優、元モデルと、容姿に自信のあるせいか、


あまり仲が良くはないと聞いていて 


王様は2人が喧嘩をしないように、


交互に平等に寝室に呼び、王国から出る時も、交互に連れて歩くようにしているらしく。   


  王様は聡明で行動力もあり、洞察力に優れ、計画性もあり、努力家で、思ったことは、必ず成功させ、


悩みなど無いように見えるが、


その2人の側室同士のいがみ合いだけは悩みだとか。   


  交渉人も紀代子も、王様が計略した訳ではないが、たまたま正式な妻、王国の王妃と決めた女性が要子であることで、


側室同士のいがみ合いも消えるのではと予想していた。  


王様は、悩んでいて、女性の心は難しいと半分は諦めていたようだが。






       (つづく)

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