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第21話

 かくして、要子は何もかも初めて尽くしで、王様との結婚式を終え、


仮想国ではあっても国民は毎年、国民税を納めている、一応は国の王妃となりました。


 城を鍵のかかる個室を除いて全て開放しての王国あげての素晴らしい式でした。 


神父さんはイギリスから来てもらったようで、英語で話す神父さんの話は要子にもよく理解できました。  


 普段はおおよそ4百人くらいの人が島に住んでいるらしく、


王様は国民全員に招待状を送り、


日本でいうと新年、正月休み中ということもあるのか、全員が参加して、盛大なものでした。 


 言葉も英語、中国語、イタリア語、フランス語、ドイツ語、日本語と、入り乱れ、賑やかに楽しく深夜まで宴は続きました。    


 要子は王様のスピーチに感激し、


横に並びながらも、ふと王様を見上げてしまうほどでしたが、王様は優しく要子に頷き、


マイクを要子に手渡し、少し挨拶してごらん、緊張しないで、、思ったことを言ってごらん、


今日の要子は、とても美しいと。    


 千人以上の、それも世界的にも、皆が皆、それぞれ有名人ばかり、、どうしよう、何を話そうか、困ってしまいましたが、


王様は要子の背中をそっとさすり、要子は意を決して、        


「要子です。 


今日から、この王国の王妃になりました。 


16才です、現在は日本で大学受験の為に予備校に通っています。


まだ王国について、また、、世の中のことについて、あのう、、ちっとも知りません。 


 ですが、王様に教えて頂きながら、


この王国の王妃として、恥ずかしくないように、務めていきたいと考えております。 


どうか皆様、よろしくお願い致します。」  


 深く頭を下げると、盛大な拍手でした。 

要子は英語で話すのは姉達のように流暢ではありませんが、ゆっくりゆっくり丁寧にきれいな発音で話し、それが却って好感を持たれたようでした。


 ウェディングドレスは裾を長く長く引いていて、


千代子も紀代子も、こんなウェディングドレス見たことないと驚いていましたが、


スカート部分には中枠が縫い込まれていて、ドレスに躓く事はありませんでした。


 いくら世事にうとい要子であっても、ウェディングドレスだけ見ても、


要子には思いもつかないほどの高価なものであることは知ることができました。


 まるで夢の世界にいるようで、現実とは思えませんでした。


ミスターマッドは要子を気遣い、時折休む部屋に連れて行ってくれ、


トイレを済ませたり、ジュースを飲んだり、お化粧を直してもらったりしました。







       (つづく)



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