部長は言った。
「私、思うんです。栃華さんの自転車をパンクさせた犯人はキャプテンさんじゃ無いんじゃないかと。」
私も推理していくに連れて、そうなんじゃないかと思っていた。キャプテンの動機はいじめをする野球部部員への仕返し。私に被害が及ぶのはおかしいのだ。百歩譲って私に被害がおよんだとしても、わざわざ日を跨いでやるのはおかしい。もしかしたら、知らないうちに恨みを買っていたのかもしれないが、私には分からない。
「そういえば栃華さん。今日は寝坊して遅刻したんだよね。もしかして、あの近道使った。」
あの近道とは、駅から学校まで、一直線に繋がっている道のことだ。
「うん。急いでたからね。」
愁が納得したように頷く。
「あの道は普通自転車で通る道じゃない。道幅は狭いし石が散乱してる。きっとその時に空いたんだよ。」
まさに、骨折り損のくたびれ儲けだ。今までの知恵働きはなんだったのだろう?思わず深いため息が出た。
「栃華さん。私たちで1,000円ずつ出しますよ。栃華さんの推理はすごかったです。そう、気を落とさないでください。」
おお、この女性はメシアだったか。とても輝いて見える。
「ちょっと、僕は出すって言ってないですよ。」
ありがとう部長。ありがとう探偵部。私は、この部活に入って初めてよかったと思えた。
「出すって言ってないですからね!!」