脳裏に流れてきた映像には、互いに今より成熟した……大人の姿をしており汗ばんでいる。
映像に流れた景色は、町内にある神社。その本殿から少し離れた控え室に似ていた。
兄に似た相手は、巫女服を乱され、あられもない姿で喜悦をあげていた。
気持ちよさそうに『あらし……、あらし……、』と自身の名前を呼び、快楽に浸っている。共に、艶めいたアルト調の声が、耳にこびりつく。
その後に、行為が進むたびに互いの熱が混ざり合い、神社の室内である床を汚していくばかり。
滾った熱が奥深くへと伝わっていくようなーーまるで映画のワンシーンのよう。
ドラマのワンシーンのように艶やかで。━━━禁忌的な映像。
だが、実際はしたことない。なのに、生々しいリアルさ。
意識が現実に戻った今。いつの間にか、全身から汗が噴き出していた。心臓の鼓動と血流が破裂しそうなくらい、ドッ、ドッ、と爆音を立てている。
今は、夏の長期休みがもうすぐ始まる手前の暦。ひぐらしの鳴き声によって、嵐は現実の世界へと呼び戻されてしまった。
(━━━……今、頭に流れた映像は何だったのだろうか?)
訳が分からずのまま、胸の内に静かに問いかけても返答する者はいない。まるで、狐に化かされた気分とはこの事だーー
そして地面に落ちた雑誌は、海里に似た大人が、何かを達した後のような穏やかさに満ちたーーそんな印象を受ける表情。そのページが大きく開かれたままだった。そんな幸せが溢れた、とろりとした瞳に、嵐は脳随の芯から甘い熱を感じた。
真正面に撮られているこの俳優と改めて見ると、自身の兄が大人になったと思えるくらいそっくりだった。
途端に、脳の奥がザワリと血が騒ぎだす。
熱い
━━あつい、
━━━━灼けるように、アツい……
自身の中が一点へと熱が集中し膨張していくのを感じた。じんわりと広がる、控えめな痛み。それは、くすぐったくて、どうしようもなくもどかしい。
一点に帯びた熱を出したくて、堪らない。━━━あの映像のように。
そんな思考に染まっている中。視点を下へ向けると……その存在感が高まっていた。
(え……、なんだよコレ!?なんで、こんなことに━━━…!?)
腹の奥底が、初めての熱に鈍くざわついていた。
戸惑った嵐。だが、ここで青い春から大人になる一歩の現象、とふと思い出す。そして、これは彼にとって初めての経験だった。
海里への妄想が引き金となった、まだ名も知らない身体の反応。先ほど、相手への渇望で湧きあがった。
だが、━━この感情の名前を知らない。
混乱と困惑の渦に溺れながらも、その熱を鎮める術を知らない嵐。
顔を真っ赤に染めたまま、この場から立ち去ってしまった。
まるで、自分の中に生まれた、〈ナニカ〉から逃げるようにーー