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無自覚初恋〈蕾ー③〉


『あッ……、んぅ、ン、ぁ、あッ、あっ……、あ…らし。ま、…ッて」


『そこばっかり、やぁッ……、ぁ、あ、━━んぅ、』


 脳裏に流れてきた映像には、兄を組みひいている自分がいた。

 互いに裸で汗ばんでいる。

 映像に流れた景色は、町内に鎮座している神社。その本殿から離れた控え室に似ていた。

 そこで組みひかれた兄は巫女服を中途半端に脱がされており。とても扇情的だった。

 発達途中の喉仏を噛みつき。胸の先端に熱を帯びた肉厚の舌でちゅるり、と音をたて絡めている。


『あっ━━━……ソレ好き、好き。もっと、もっと』


 気持ちよさそうに『あらし……、あらし……、』と自身の名前を呼び、快楽に浸っている兄の姿。共に、艶めいた未熟なソプラノ調の声が、耳にこびりつく。

 その後に、写真のように後孔に滾った熱を突っ込み。蜜壺の奥まで擦りあげている自身の姿。無我夢中に腰を打ちつける。海里の良いトコロを━━━何度も、何度も。それは、写真のように蕩けた表情だった。

 兄の蜜壺から透明な愛液が飛び散り、神社の室内である床を汚していくばかり。


 ドラマのワンシーンのように艶やかで。━━━禁忌的な映像。


 だが、実際はしたことない。なのに、生々しいリアルさ。

 いつの間にか、全身から汗が噴き出していた。心臓の鼓動と血流が破裂しそうなくらい、ドッ、ドッ、と爆音を立てている。

 今は、夏休みがもうすぐ始まる手前の暦。ひぐらしの鳴き声によって、嵐は現実の世界へと呼び戻されてしまった。


(━━━……今、頭に流れた映像は何だったのだろうか?)


 訳が分からずのまま、胸の内に静かに問いかけても返答する者はいない。まるで、狐に化かされた気分になる。

そして地面に落ちた雑誌は、ネコ男優の顔が白濁まみれのページで開かれたままだった。その表情は幸せそうで、嵐は下腹部に甘い熱を感じた。

  真正面に撮られているこの俳優と改めて見ると、自身の兄が大人になったと思えるくらいそっくりだった。


 直後、下腹部周辺にザワリと血が騒ぎだす。


熱い

━━あつい、


━━━━身体が灼けるように、アツい……


 自身の分身が一点へと熱が集中し膨張していくのを感じた。控えめな痛みのある熱。その痛みは、くすぐったいようなもどかしいさ。


 一点に帯びた熱を出したくて、堪らない。━━━あの映像のように。


 そんな思考に染まっている中。視点をそちらに向けると、ジーパンのチャック辺りがテントのように膨らんでいた。


(え……、なんだよ!コレ⁉なんで、大きくなってんだよ⁉)


 前に保健体育の授業で習った思春期から大人になる一歩の現象。これは嵐にとって初めての経験だった。

 戸惑った嵐。咄嗟にジーンズの中を確認すると。普段、控えめで未熟な桃色の鈴口は、朱色に染まっていた。だが、大人の一歩はこれだけじゃなかった。


「━━━な、なんで⁉透明な液が勝手に出てんだよ‼」


 嵐の未成熟な雄棒。尖端の窪みから啜り泣くように透明な涙がはらり、はらり、と零れ下着を汚していた。今でも窪みは、くぱくぱ、と熱と吐き出している。


 海里への妄想で生まれた生理現象。

先ほど、兄が欲しくて堪らないと湧きあがった感情。だが、━━この感情の名前を知らない。


 混乱と困惑の渦に溺れつつ、もどかしい痛みと熱を鎮める方法を知らない、未熟な少年。

 顔を真っ赤にして、この場から走って逃げ出してしまった。



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