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此処。神龍時家は、商店街がある町内と反対方向にある小学校の中間地点にある。
人里から離れた山の麓に鎮座されている神社の近くに建てられた敷地が広い一戸建てだった。徒歩十分くらい離れた裏に、神山で有名な渡月山。その麓にこじんまりとした茶室が存在している。
昭和の名残がある木造の二階建ての一軒家である、神龍時家。
元々は、他人が使用していた旧家の母屋だった。
昭和のバブル時代より前に建てられた旧家には、地主の家系である老夫婦が住んでいた。
だが、妻に先立たれたこと。そこで都会で暮らしている息子夫婦と住む話になり、この家を売却することになった。
そこで購入したのが、今の家主である〈神龍時 宗一郎〉。
彼は家庭の事情により、親同士から婚姻を認めて貰えず駆け落ちしてきた。身ごもった妻と共に。
この時の宗一郎は、齢二十九。妻である〈卯ノ月 律〉は、齢十九。
彼らは、〈厄除師〉と言われる平安時代から続いている厄払い師の一家だった。現代では、裏稼業とされている。
厄除師の本家には、十二家。それぞれ十二支の一部が入った苗字で存在している。子(ねずみ)は〈子島〉。丑は〈丑崎〉など……。
特殊な家庭に生まれ、二年前に出会った。
しかし、本家同士の婚姻は禁止とされている規則の時代。
そんな二人の間に、六つ子の命を授かった。
後に。駆け落ちしたこの土地で命を生み出し━━━━現代に至る。
「ただいま~」
先ほど、大人の雑誌の件で未熟な熱を発散できなかった嵐。檜で作られた縦格子戸である玄関を乱暴に開けた。
急いで靴を脱ぎ棄てる。いつもは靴を揃えてから式台に上がり、台所へ向かうのが日課。
奥から、『おかえり〜、嵐』と妹の声が聞こえたが、内心余裕が無い。今は、とある場所に行きたくて堪らなかったからだ。
駆け足で二階へ上がり、自室へ向かった。上がると六つ部屋が横並びしている。すぐに、手前から三番目の部屋に入り、乱暴に鍵を閉めた。
今、この自室内に嵐しかいない。
改めて、自身のジーパンのチャックを開けると。下着の中身を見ると、真っ赤だった鈴口はいつもの色に戻っていた。共に控えめな大きさに戻り、すっぽりと下着に包まれている。でも……、
「うげぇ~……、パンツの中がぐしょぐしょで気持ちわりぃ……」
先程の先走りで出た愛液で濡れている下着ほど、感触が気持ち悪いモノではない。
(少し早いけど……、風呂へ入ってサッパリするか)
今の時間帯だと、妹は台所で夕飯作りの手伝いをしている。
そして、他の兄弟たちは居間でTVを観ているか、自室にいるか、が多い。ーーなので、風呂へ行くのに丁度良いのだ。
箪笥の中にある下着を持ち出し、そのまま風呂場へ向かった。