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初恋華〈一片開き→開花⑤〉



 俺の質問に、この場の空気が変わった。

 まるで、豆鉄砲くらったような顔をする兄弟に、こちらもどういうことだ、と頭の中が〈?〉だらけになってしまう。すると、


 「海里兄さんは、風羅が一人で控室へ行くのに大変だから付き添いに同行するって、さっき言っただろう?何を聞いてたの⁉嵐」


 ズイっと、俺の顔へと自分の顔を近づけてきた宇宙。しかも、しかめっ面と指を差してだ。

 俺より背の低い次男。上目遣いでこちらをジト目している。傍から見たら、微笑ましい兄弟のやり取りと思っているだろうな。でも、兄弟たちは宇宙の性格を嫌というほど知っている。だから……、この状況を止めない。……いや止められないんだろな。


 「え……?そうなの⁇」

 「五秒前に、海里兄さんから説明があったじゃん!もうさ、本当に耳だけじゃなくて脳みそもポンコツ越して、老化してんじゃないの⁉病院行ったら?」

 「それは、言い過ぎだろ⁉宇宙。俺だってな、人の心あるんだぞ‼傷つくことだって━━━……」

 「それだったら、この僕にポンコツって言わせるなよ!ほらぁ~、このやり取りだって皆の時間の無駄にさせているんだからな。自覚できないの?━━え?もしかして、バカなの⁇ねぇ。あとこれ以上、口答えするんだったら残りの夏休みの宿題を手伝わないからな」

 「━━ッ!お、おまえ。それは卑怯━━……」


 そう、コレがあるから他の連中兄弟は口出ししてこないんだ。

 宇宙は、兄弟の中でプライドが高い。コイツの言い分に返答すると、こうしてアルト調の声で、十倍で毒を吐いてくる。しかも、隙を見て人の弱みを一刺ししてくるから達が悪い。

 (マジで……?宿題手伝ってくれないのか⁇あの量をッ⁉)


 予想外の出来事に、窮地に立たされてしまった俺。これから、誰に宿題を手伝ってもらえば良いのか……と頭を悩ませている余所に、

 「そうそう。とりあえず、海里兄さんさ。風羅を控室に連れて行くんでしょ?」

 「あ、あぁ、そうだな……」

 「ポンコツ嵐と弟たちの面倒は僕が見るからさ。早く行きなよ。時間、危ないんじゃないの?」

 「━━━ッ⁉風羅、あと四十分で舞が始まるぞ。早く、行かないと‼」

 「え……、でもかき氷が、まだ……」

 「舞が終わったら食べる時間があるから。━━━━それより、早くしろ‼二人して・・・・遅刻してしまうぞ」

 どうしても今、かき氷を食べたかった妹。最後の抵抗で歯切れの悪い主張をしたが、海里の言葉で却下されてしまう。そのまま、海里に連れられてこの場を去って行った。

 ふと、ここで妙な感覚が生まれる。


 (二人して、って……どういう意味だ?)

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