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初恋華〈獣、目覚める〉

「あ、お姉ちゃんがこっちへ来たッ‼」


 さらに、宇宙の左隣にいたくもりが、歓喜の声を上げる。

 その声につられて祭壇の方へ見ると、俺たちの前で巫女神楽を舞う風羅。普段は前下がりボブの黒髪がいつもより艶やかで、唇につけている紅で大人っぽくなっていた。

 「風羅お姉ちゃん、大人っぽくて綺麗だね~。くもりお兄ちゃん」

 「そうだね。こんなことだったら、ぼくも参加してお姉ちゃんと一緒に踊りたかったよ。まったく、一緒に踊っている女……誰か知らないけどさ」


 (いや━━、無理だろッ⁉)

 思わず心の中でツッコむ。そもそも、巫女舞に参加できるのは穢れなき者……つまり、


 「それは無理だよ。だって、くもりお兄ちゃんは男だし。それに、巫女舞に参加できるのって未成年の女の子だけだからね」


 末っ子からの正論に、ショック受けたくもり。普段は、女の負けないくらい可愛らしいくもりの表情が崩壊してしまった。

 その後、「末っ子のくせに生意気だよ」とムキになって大地の頭を掌で叩いた。その後は、当然……

「くもりお兄ちゃん、叩かないでよ~!わっち、本当のことを言っただけなのにぃ~~」

「だって、大地がKY発言をしたから悪いんだよ!ね、そうでしょ?宇宙兄ちゃん」

 と、瞳を涙で潤ませて訴える、くもり。この歳であざとさを習得したらしい。

「いや、今のはくもりが原因だね」

 ここでバッサリと訴えをぶった切る、笑顔の宇宙。たぶん、面倒だったから会話をおわらせたかったんだろう……と察し沈黙を貫くことに決めた。


 うん……、俺も面倒事は嫌だし。

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