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初恋華〈獣、目覚める②〉

 その後、祭壇での舞へと視界を変えると━━━━自分の眼を疑ってしまった。

 主に、妹と手を取り合って微笑む相手にだ。

 青竹色に似たストレートの黒髪。腰まで長い髪が艶やかで触れたくなってしまう。

 滑らかに舞う姿は、どこか魅了させる。色白の肌。指先で愛撫するような舞の表現をしている風羅の相方。

 言葉にしがたいほどなまめかしくて……、目が離せない。

 でも……、知っている。この感覚を。

 あの四年前、風呂場の……


 そして舞いの曲が終盤に差し掛かると、風羅とその相方は手に持っている神楽鈴を天に掲げた。会場の観客へと目を向ける二人。風羅は、俺たちの席の反対側へ。彼女はこちらへと。もちろん、俺へもだ。

 数秒後に、バチリと視線がぶつかる。


 ━━━ドクリッ……


 それは、見た事ある目尻が涼しげな切れ長だった。共に、親近感の湧く瞳の色。長男と同じ鈍い琥珀色で俺を映している。心臓がざわめき、血流が活発になっていく。

 それでも互いの視線が絡む。絡まった視線は、求めるように深く、根深く溶けあっているような感じがした。

 ここだけがゆっくりと時間が流れる感覚が広がっていく。

 心地良くて、時が止まれば良いのに……、と願ってしまうほどに。そして、


 (あの子が、━━欲シクテ 堪ラナイ)



 シャン、シャン……。清らかな音が高く鳴り響く。

 まるで、禁断の扉が開かれるカウントダウンのように。俺の中にいる獣が待ち構えていたような感覚が湧きあがってくる。

 今でも艶やかな紅色の唇が弧を描き、慈愛満ちた笑顔を向けてくる彼女。その微笑みもアイツと同じで━━……

 (風羅と一緒に踊っているヤツって……まさか)


 「……か、海里?」


 その瞬間。血が、━━━爆ぜた。

 それは血管に流れている血液が、ブワッと沸騰するような感覚だった。騒めいていた心臓が加速し滾りが止まらない。共に胸の奥で、海里を求めている獣がいた。

 あの清らかな身体に、自分のモノだという印をつけたいとかのレベルではない。

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