その後、祭壇での舞へと視界を変えると━━━━自分の眼を疑ってしまった。
主に、妹と手を取り合って微笑む相手にだ。
青竹色に似たストレートの黒髪。腰まで長い髪が艶やかで触れたくなってしまう。
滑らかに舞う姿は、どこか魅了させる。色白の肌。指先で愛撫するような舞の表現をしている風羅の相方。
言葉にしがたいほどなまめかしくて……、目が離せない。
でも……、知っている。この感覚を。
あの四年前、風呂場の……
そして舞いの曲が終盤に差し掛かると、風羅とその相方は手に持っている神楽鈴を天に掲げた。会場の観客へと目を向ける二人。風羅は、俺たちの席の反対側へ。彼女はこちらへと。もちろん、俺へもだ。
数秒後に、バチリと視線がぶつかる。
━━━ドクリッ……
それは、見た事ある目尻が涼しげな切れ長だった。共に、親近感の湧く瞳の色。長男と同じ鈍い琥珀色で俺を映している。心臓がざわめき、血流が活発になっていく。
それでも互いの視線が絡む。絡まった視線は、求めるように深く、根深く溶けあっているような感じがした。
ここだけがゆっくりと時間が流れる感覚が広がっていく。
心地良くて、時が止まれば良いのに……、と願ってしまうほどに。そして、
(あの子が、━━欲シクテ 堪ラナイ)
シャン、シャン……。清らかな音が高く鳴り響く。
まるで、禁断の扉が開かれるカウントダウンのように。俺の中にいる獣が待ち構えていたような感覚が湧きあがってくる。
今でも艶やかな紅色の唇が弧を描き、慈愛満ちた笑顔を向けてくる彼女。その微笑みもアイツと同じで━━……
(風羅と一緒に踊っているヤツって……まさか)
「……か、海里?」
その瞬間。血が、━━━爆ぜた。
それは血管に流れている血液が、ブワッと沸騰するような感覚だった。騒めいていた心臓が加速し滾りが止まらない。共に胸の奥で、海里を求めている獣がいた。
あの清らかな身体に、自分のモノだという印をつけたいとかのレベルではない。