あぁ……確信してしまった。包帯美人の正体を
(そして数年前、海里に抱いた感情の意味も━━━……)
巫女舞に参加した海里の無垢を奪ってしまったことも……思い出してしまった。
「まさか、ここで思い出すとはなぁ……。アイツに対しての気持ちをさ」
しかも、実の兄貴に初恋をしていたなんて。なんで、今まで忘れていたんだろうか……?こんな強烈なことを
(誰かに、記憶操作されたのか……?)
そうなると、━━━誰に?
厄なのか?━━━いや、その可能性はない。奴らは基本、現世の者の生気を喰って彷徨うから。
そうなると……、部外者か?
それなら、何のためにだ?記憶操作をするなら、この感情を消してもメリットはない。
もし、身内だったら……?
確かに、うちの身内に一人だけいる。記憶操作……というより、〈編集をする〉というのが近いかもしれない。
(でも……それだったら、なんでこんなことを?そんなことする意味が………)
「それにしても、神龍時さんところの長男が、あんな美人に化けるとはなぁ」
突然の野太い声に、我に返る。それは右隣からだった。チラリと横目で見ると、知らないオッサン二人がひっそりと会話をしていた。
(祭りの関係者か……?)
兄弟たちは、海里が女装していることを知らない。それを知っているのは、関係者しかいない。
「本来、女二人で巫女舞をやってもらいたかったけどなぁ」
「まぁ、それは仕方ないですよ……佐藤さん。今は、少子化で難しくなっていますからね」
「そうだな……。毎年、女装して巫女舞してくれているだけでありがたい話だよな」
(…………毎年、巫女舞に参加していたのか⁉アイツ)
初めて知った衝撃の事実に俺はショックを受けてしまう。でも、ここで佐藤というオッサンの声色が変わる。
「俺だったら……、〈契りの盃〉を交わしても良いけどな」