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第2話 出会い

高校2年生の夏に母が亡くなった。父と母は、娘の私から見ても恥ずかしいぐらい愛し合っていた‥‥‥‥‥と思う。だからかな?後を追うように高校3年生の夏に父が病気で亡くなった。父の葬儀は暑い日だったけど、コレから1人で生きていかないといけないという重圧で、不思議と暑さは感じていなかった。

父の葬儀が終わり‥‥‥父の遺骨を抱いて家に戻ると、1台の高級車が家の前に止まっていた。

黒くツヤツヤした車に嫌な予感しかしなかった。こんな高級車に乗ってる知り合いなんて私達家族には1人もいない。これは‥‥たぶん母方の何かだとしか考えられなかった。

車から降りてきたのは50代ぐらいの男性1人。

コツン コツン コツン ゆっくり近づいてきて口を開く。

「糸原紗英さんですね?」表情をひとつもかえず聞いてくる。

答えて良いのか、わからなかったけど‥「はい。」と恐る恐る答えた。

「私は有栖川太蔵様の秘書の中野です。」名刺を差し出してくる。名刺を受け取りながら顔を見る。

やっぱりか‥‥‥‥‥。母の亡くなった時は来なかった。いや。来てお父さんが‥‥‥‥会ったのかな‥‥‥‥。「あの〜何か用でしょうか?」

「はい。会長の代理に参りました。」

「はい。」有栖川太蔵とは母の父という人だと名前は認識しているが1度も会った事はない。声も聞いた事もない。秘書と名乗った人は唐突に話す。

「大学の費用の1千万円と今日から毎月、大学を卒業するまで生活費と20万円を振り込みます。」

「えっ!えっ!」

「そのかわりに2度と有栖川を名乗る事は許さない。有栖川家の関係者だと他言することも許さない。っと言付かってます。」やっぱり表情を一切かえない。

「はぁ〜。お金は結構です。大丈夫です。貰わなくても名乗りません。ご安心下さい。」

はぁ〜。

「困ります。了承の書類に署名を貰って帰り、振り込み先を教えて頂かないと私が怒られます。最悪、解雇です。」

「えっ。解雇?そんな‥‥‥。」こっちも困る。

「有栖川家に今更用事はないですよね?」

「はい。」生まれてから1度も関わった事ないから今更‥‥関わりたくない。

「だったらメリットしかないじゃないですか。これから先頼れる親戚はいない。だったらお金は必要ですよ。何があるかわかりませんよ!」ド正論を無表情で伝えてくる。

「う〜ん。そうですよね。なんか悔しいけど仰るとおりです。お願いします。」っと頭をさげる。何があるか分からないもんね。受け取ろう。

書類に署名をして振り込み先を書き渡す。

今日中に大学費用と1回目の20万円を振り込みます。っと言って‥‥‥去っていった。

両親が遺してくれたお金で大学は行けたけど‥‥‥。この先なにがあるかわからないから〜ありがたく貰っておこうと気持ちを切り替える。


3月‥‥大学に合格して引っ越しを決意した。両親との思い出はあるが1人には広すぎる。広いぶん家賃もたかい。

大学の近くのワンルームに引っ越すことにした。部屋探しは頼める保証人もいないし難しいと思ったが、保証人なしで家賃も安くオートロックで築浅でワンルームだけど広くてトイレ・バス別のこんな所は2度とないだろうという物件があり即決定した。運が良かったなー。お父さん、お母さんが引き合わせくれたのかな!深くは考えなかった。

3月中旬に小さい卓上の仏壇と2人の遺影を大事に持って引っ越しを済ませた。

はぁ〜今日からここが私達の家だよ。っと両親に話しかける。

「さぁ〜てまずは買い物がてら近所を散歩しよう!!」

高級マンションが立ち並ぶところでスーパーを発見したが高級なものが多くて高い。

ここはダメだなー。他にないかな??っと歩き進めるとあったー!!うん。うん。見慣れた商品と値段。良かったー。スーパーあった!!

買い物してブラブラしていると‥‥‥大きい窓がたくさんあり木と緑がたくさんで取り込まれる光がキラキラしているカフェをみつけた。なんか〜いいな。っと惹きつけられたように店内に入る。

席に座り、はあー何か落ち着く。この空間いいな。

カフェオーレを頼む。スタッフも温かい穏やかな空気感で落ち着く。こんな所で働きたいなぁ〜。

ゆっくり休憩をして席を立つ。

お会計の所で小さい名刺のようなものが目にはいった!!えっ!アルバイト募集中!!!えっ!!ラッキーすぎる。

働きたい。興奮気味にお願いすると〜かわいい店員さんがオーナーを連れてきてくれた。オーナーもかわいらしいフワっとさした女性。

「じゃ。近いうちに履歴書を持って来てほしい。」

「あっ!いきなりでごめんなさい。もちろんです。持ってきます。」

「フフフ。気に入ってもらえたみたいでうれしい。明日でも来れる?」

ころれが、Cafe Perchとオーナーの瑞穂さんとの出会い。


無事に面接に合格してCafe Perchで働く事ができるようになった!初日に瑞穂さんがスタッフを紹介してくれた。大学2年生の森下省吾さん・大学3年生の藤森茜さん

2人とも私と同じ大学だった。心強い!!

4月1日。大学の入学式。カリキュラムを決めないと‥‥‥何を選択するべきか‥‥悩む。まったく分からない。

Perchで森藤さんに聞く。頼りになる先輩がいて良かった!

わかりやすく教えてもらって決められた。良かった。Perchには週に4〜5日入るようになった。

常連のお客さんと会話を楽しんだり楽しく働けている。

瑞穂さんがニヤニヤしてこっちを見てくる。

「紗英ちゃん。これを持って行ってくれる?」

「はい。」

そう。このコーヒーを持っていくお客様が25歳くらいの会社員で時々、夕方に来てくれる男性。

この方が来ると緊張する。そんな私を他の3人は面白がる。でも、そのおかげで毎回、席に持っていける。

「おまたせしました。コーヒーです。」っと小さい声で言い。そっと置く。お仕事中なので邪魔をしないようにさっと去る。

かっこいい。

私と匠翔さんとの出会いはPerchだった。私はそう認識していた。


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