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第3話 出会い【匠翔】

1年半前の夏に‥‥‥キレイな女の子に「出会った。」正解には「見かけた。」

父の会社に入って3ヶ月。チヤホヤされるが何も権限がなくモヤモヤしている毎日だった。

あの頃の俺は母と別れたあの歩道橋で夕日をみて心を落ち着かせるのが唯一の癒しの時間だった。

母と父は小学1年生の時に離婚し今の義母と父が再婚した。母が出て行く日に‥‥この歩道橋に2人で夕日を見にきた。それが母との最後だ。母の実家は事業をしており順調であることは確認している。母も誰かと幸せであってほしいと願っている。


あの日も会議で俺の提案を誰一人まともに聞かない。こんな古い体制で古い仕事の仕方では〜伊集院コーポレーションは衰退するだろう。業界トップの有栖川物産は一時は衰退していたが‥‥会長の有栖川太蔵が完全には引いていないが、息子の太一に任せる分野が出てきて任せた分野が軒並み成長しているのにうちはダメだ‥‥。ドイツもコイツも頭が古すぎる‥‥。と1人苛立っていた。癒やされに行こうといつもの歩道橋に車を走らした。

歩道橋の階段を登っていると‥‥高校生ぐらいのキレイなコが橋から遠くを眺めていた。

初めは身を投げないか注意深くみていた。刺激を与えてはいけないと思い。声もかけなかった。

彼女は声も表情もかえずに静かに涙を流していた。

夕日に染められた彼女の髪がキラキラ光ってより一層、彼女のキレイさが増していた。

時間を忘れて見惚れてしまっていた。太陽が沈むと彼女は空を見上げて笑った。何かを決めたようだった。そして颯爽と階段を降りて行った。見惚れて声をかけなかった事をひどく後悔した。

また、会えると願って歩道橋に来る時は胸が躍ったが歩道橋で会えることはなかった。きっと彼女に悲しい事がないのだろう。それは、良い事だと自分に言い聞かせていた。

今年の夏で2年になるな〜ってぼんやり思っていた3月の中旬に偶然、彼女を見つけた。

いつも息抜きに1人で行くCafeにいた。働きはじめたみたいだった。年甲斐もなく運命を信じた。

Cafeに行く回数も心なしか増えた。Cafeで彼女の表情や動きをみるのが俺の唯一の楽しみになった。

あの歩道橋の時の彼女とは違ってクルクル表情がかわる。常連の客の話を聞いて喜んだり・悲しんだり・ビックリしたり相手の気持ちに寄り添う優しさが出ている。年配の客には気配りをして席まで丁寧に案内している。子供と話す時は必ずしゃがみ同じ目線になる行動一つとっても優しさが滲みでている。俺にもいつか話してくれないかな、話を聞いてもらいたいと強く思うようになった。まだ、気軽に話しかけてはもらえない。顔が恐いのだろうか?

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