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第4談 パチンコ屋に棲みつく悪霊!?

 大学を卒業した私は、K県のF駅から徒歩5分くらいの所にあるパチンコ屋に正社員として働いていました。


 その仕事は、予想以上にハードでして、開店から閉店まで、お客さんのドル箱を何度も運んだり、調子の悪い台をメンテナンスしたり、時には負け続きのお客さんには絡まれたりと、肉体的にも精神的にもキツい日々が続き、最初の3ヶ月くらいは辞めることばかりを考えてました。


 しかし、人間はどんな環境でも徐々に慣れてくるものでして、入社してから1年後には、そんな生活にも慣れてきました。そして、常連のお客さんや同世代のアルバイト店員とも、それなりに良好な関係を築いて仕事をしてました。


 そんなある日のこと、店内を巡回してた私は、常連客のNさんという70代くらいの女性に呼び止められました。


 彼女は、ほぼ毎日来店し、いつも愛想がよく勝った時には差し入れでジュースやお菓子をコッソリと渡してくれる気の良い方です。


 その彼女が青ざめた表情で


 「ねえ、お店のトイレの清掃用具入れのロッカーが何か変なのよ!」


 と言うのです。



 「変というのは、どういうことですか?」


 私は、彼女に聞き返しました。


 「さっき、トイレで用足して、手を洗ってたら、清掃ロッカーの中からカタカタと音が聞こえるのよ!気になって開けようと思ったら、鍵かかって開かないのよ!ねえ、誰か隠れてんじゃない?私、気味悪いから調べてくれない?」


 Nさんは、私にトイレを調べて欲しいと頼んできました。


 そこで、私はスタッフルームから女子トイレの清掃ロッカーの鍵を取ってきて、室内にお客さんがいないのを確認してから調べましたが、もちろん清掃ロッカーの中には誰もいません。


 「Nさん、ロッカーの中には誰もいませんでしたよ。Nさんが聞いた音も気のせいですよ!」


 私の報告を聞いた彼女は、気を取り直し再びパチンコに熱中し始めました。


 それから、1ヶ月後くらいのことです。私が出勤すると店前にパトカーが止まっていて、店長が何やら警官と話してるのです。


 私は状況が把握出来ず(一体何があったんだ?)と立ち尽くしていたのですが、次の瞬間、信じられない光景を見ることとなりました。


 なぜなら、手錠をはめられたNさんがパトカーで連行されていったからです!


 その後、同僚に聞いた話によれば、Nさんが突然店内で包丁を振り回して暴れ回っていたそうです。


  「私はこの店に貯金を全部注ぎ込んだけど、全然勝てなくて全財産失った!もう、生活出来ないから、ここで死んでやる!」


 彼女はそう叫んでいたそうですが、同僚いわく、その時の顔はまるで〝鬼女〟のように見えたらしいです。


 包丁を持っていたので、男性店員も近寄れないため、警察を呼んだとのことです。


 その日以来、私が彼女の姿を見ることは二度とありませんでした……。


 数ヶ月後、私の後輩として入社したTちゃんという女の子がいました。


 彼女は入社して2ヶ月後くらいの頃、チャラ男風な若い男性の常連客と仲良くなり、店長には内緒で交際を始めるようになりました。


 私は先輩ということで、閉店後、彼女の恋愛相談……というよりは、ほとんどノロケに近い話をちょくちょく聞かされてました。


 ある時、彼女は妊娠したので、近いうちに店を辞めることを話してくれました。お腹の子の父親は、もちろん例のチャラ男君です。


 それから数日が過ぎて、閉店後の店内清掃をしていたら、Tちゃんが、


「すいません。ひらやまさん、女子トイレまで来てくれませんか?」


 と、私に言ってきました。


 「どうして?Tちゃん何かあったの?」


 「はい、実は……」


 彼女の話によると、1


 「Tちゃんの見間違いだよ」


 「いいえ!確かに見ました!怖いから一緒に調べてください!」


 私は彼女の迫力に押されて女子トイレを調べましたが、ロッカーはもちろん、室内には誰の姿もありませんでした。


 念のため、私は店内に残っていた他の同僚やアルバイトにも確認しましたが、女子トイレには我々以外は閉店してから誰も入っていないそうです。


 そんな出来事から1週間後、出勤した私がスタッフルームに入るとTちゃんが泣いていて、同僚の女の子たちが彼女を慰めていました。


 よくよく話を聞くと、彼女はチャラ男君に遊ばれていたらしく、妊娠を告げた途端、音信不通となってしまったそうです。


 言われてみると、ここ一週間くらい彼の姿を店内で見てないことに気がつきました。


 父親が逃げてしまったため、彼女はお腹の子を泣く泣く中絶し、その直後逃げるように店も辞めてしまいました。


 NさんとTちゃんに突然不幸が訪れたのは、彼女達が遭遇したという女子トイレの清掃ロッカーにいる〝何か〟の仕業なのでしょうか?


 もしも、私もロッカーで〝そいつ〟を目撃していたら、災厄に巻き込まれていたかもしれません……。 

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