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第7談 線路脇の一軒家

 これは、私の知人から紹介された金沢淳一郎さん(50代仮名)を取材した話です。


 彼は地方出身者でしたが、いわゆる転勤族であり、30代後半の頃に会社から都内の支社への勤続を命じられました。


 色々と不動産を巡った結果、格安の家賃の一軒家を見つけました。


 ただし、そこは都内の某路線の線路脇に面しており、電車が通るたびに轟音がしたり、家が揺れるのが欠点でした。


 一応、会社からは家賃負担があるのですが、真面目な性格の彼は(会社にあまり負担をかけてはいけない)と考えて、その安い一軒家を借りる事にしました。


 金沢さんは独身でしたので、日中は、ほとんど家にいなかったこともあって、1ヶ月も過ぎた頃には電車の音や振動にも慣れたそうです。



 ある平日、彼は、有給日だったのですが、11時過ぎくらいに線路から“キキーッ“と物凄い音が聞こえてきました。


 慌てて、窓から見ると、電車が急ブレーキをしたようで、彼の家の真隣の位置で停車していました。


 その後、パトカーや救急車が駆けつけてきました。


 家の外から救急隊員や警官の会話が聞こえてきたので、彼は聞き耳を立てていたのですが、話の内容から察するに、飛び込み自殺があったため、電車が停まったようです。


 (何で、俺の家の近くで自殺なんかするんだよ。気味悪いなぁ)


 正直な所、金沢さんはそう思いました。


 夕方、近所のおばさん達が事故の事を話していたので、携帯電話をかけるフリをして彼女達の近くで話を聞いた所、自殺したのは男性で、その身体はバラバラになっていたという事が分かりました。


 それから、数日が経った頃、眠っていた金沢さんは何かの気配を感じて目が覚めました。


 起き上がろうとしたのですが、体が動きません!


 「うぶぁぁー!ぐぅぁぁぁ!」


 耳を傾けると窓の方から男性の唸り声のような音が聞こえてきました。


 力を込めると、首だけは動かせたので、窓を見ると、男の生首が苦しそうな表情をしながら、部屋の中を覗き込んでいるのです!



 彼の寝室は2階にあり、ベランダも無いため、は、すぐに分かりました。


 それを理解した瞬間、金沢さんは意識を失ってしまいました。


 次に気が付くと夜は明けてました。また、身体も動くようになっていました。


 慌てて、窓を確認しましたが、男の生首の姿はありませんでした。


(あれは、夢だよな!?そうに決まってるよ!)


 彼はそう自分に言い聞かせて出勤する事にしました。


 朝食を食べながら、何気なく1階の居間の窓の〝ソレ〟に気がついた彼は、思わず悲鳴を上げました。


 


 (夢じゃなかった!この間、自殺した男の幽霊が、この家に取り憑いてるんだ!このまま住んでたら俺もとんでもない目に遭う!)



 そう考えた金沢さんは、線路脇の一軒家を急遽引き払ったそうです……。


 彼が目撃した生首や血の手形は、電車に轢かれてバラバラになった男性の霊だったのでしょうか……?



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