私の高校時代からの友人で、Yさんという女性がいます。
数年前、別の友人も交えて彼女と会食をしたのですが、その時に聞かせてくれた自身が体験したという怖い話を皆様にもお伝えしたいと思います……。
今から、17、8年ほど前、彼女は転職を機に一人暮らしを始めることを決意したそうです。
色々調べた結果、手頃な家賃の割には、小洒落たアパートを見つけ、大変気に入りそこに引っ越しました。
入居してから、10日ほどは新しい職場での仕事が非常に忙しく、帰宅する頃には疲れ果ててすぐに寝てしまう日々が続いたそうです。
彼女が、新居の異変を感じ始めたのは、それから後のこととなります。
少し仕事に慣れ始めた頃に迎えた休日、洗濯と部屋の掃除を終えたYさんは、夕方前ではありましたが、昼寝をすることにしました。
ふと目が覚めたので、起きようとしましたが、体が動かないことに気がつきました。
手足は動かないのですが、目だけは動いたそうなので、彼女は(これって金縛り?嫌だなぁ!早く解けないかな)と思いながら、寝室内のあちこちを見つめていたそうです。
すると、玄関の方から扉を〝バタン!〟と乱暴に開くような音がした直後、何者かが駆け足で自分のいる部屋に近づいてくる足音を聞きました。
彼女は(何!?何なのよ!誰が入ってきたの?)と恐怖を感じたそうです。
やがて、足音の主は寝室のYさんに徐々に近づいてきたそうです。
この時、彼女は直接見た訳では無いそうですが、
今だ金縛りが解けないYさんは、咄嗟に目を閉じたそうですが、侵入してきた〝何者〟かは、彼女の枕元に立ち、「ウフフ」と笑っていたそうです。
恐怖に耐えられなくなったYさんが、思わず目を開けると、
それを見た瞬間、彼女は気を失ったそうです。そして、目を覚ました時には体が動くようになっており、慌てて室内を確認しましたが、女の子の姿はどこにも無く、玄関にも鍵がかかっていたそうです。
Yさんは、以前にも金縛りを経験したそうですが、この時は今までのように半分夢の世界にいるようなケースと異なり、ハッキリと自分の意識があり、間違いなく現実世界で体験したと話してくれました。
さて、話はこれだけでは終わりません。
和服姿の女の子と遭遇してから、数日後の夜。眠っていた彼女は、室内で物音がするのに気がつき目を覚ましました。
瞳を閉じながら、耳をすませて聞いてみると〝ガシャーン、ガシャーン〟と金属同士が擦り合うような音だったそうです。
その音は段々と大きくなったため、恐怖に耐えられなくなったYさんは、先日同様に思わず目を開けてしまいました。
すると、青白い光に包まれた鎧を纏った武者が寝室を歩いていたそうです。
首無し武者は、ベッドのYさんを横切ると壁に溶け込むように消えていきました。
それから、一睡も出来なかった彼女は、朝になると同時に実家に逃げ帰りました。
その後、Yさんはネットで見つけた霊能者に事情を説明し、アパートを見てもらうことにしたそうです。
霊能者いわく、彼女の部屋は「霊が通る道」、すなわち〝霊道〟になっているようでして、そこを通
る霊たちと波長が合ったために、一連の怪奇現象に巻き込まれたという見解でした。
二度も霊と遭遇したYさんは、その言葉を聞いて、アパートを引き払ったそうです。
これは、私の推測ですが、彼女が見た女の子や首無し武者の霊たちは、その容姿から察するに戦国時代に命を落とした方々だったのではないでしょうか……?