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第9談 丑三つ時に怖い話を書いていたら……

 15年ほど前のある日、T出版社の編集者の知人から、私に原稿の執筆を依頼したいという連絡がありました。


 それは、2ヶ月後に発売を予定しているオカルト本の各ページの欄外に掲載する〝都市伝説〟や〝怖い話〟の短編を書いてもらいたいという内容でした。


 私は、その依頼を引き受け、作業を始めました。1話辺りの文字数は少ないのですが、それでも書籍全体分となると結構な量になるため、あっという間に締切日が近くまで迫ってきたのです。


 時間が無いため、私は深夜に原稿を執筆しておりました。


 その甲斐もあって、残りの量も僅かとなり、ようやく締切日までに間に合いそうな目処が立ってきました。ふと、時計を見ると2時過ぎでしたが、私は(もう一踏ん張りだ!)と思い、パソコンに向かい作業を続行しました。


 すると、


 当時、私は一人暮らしだったので、扉は勝手に開いたことになります。


 時間帯や書いてる原稿の内容も重なり、私は少し怖くなったのですが、(気のせい!気のせい!)と自分に言い聞かせて、再び執筆を始めました。


 それから10分くらい経った頃でしょうか。私は背後から誰かから見つめられてるような気がしました。


 〝何者〟かの視線が、私の背中に突き刺さるような感覚だったことは、今だにハッキリと覚えてます。


 耐えきれなくなった私は、執筆を中断することにし、原稿を上書き保存しました。


 保存完了後、私は念のためにデータを開いたのですが、今まで書き上げた文章は全て消失していたのです!


 上書き保存は、いつも通り行われていたし、PC内の他のデータも消えていないか調べたのですが、それらは問題ありませんでした。


 まるで、何者かの仕業かのように、直前まで書き溜めていた都市伝説や怖い話関連だけが、跡形もなく消え去ってしまったのです!


 その事実を知った私は、反射的に後ろを振り向きましたが、もちろん誰もいません……。


 再び作業をゼロからやり直す気力を失った私は、そのまま眠ることにしました。


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 そんな時に怖い話を書いていたことによって、闇に蠢く霊を引き寄せてしまったのでしょうか?


 余談ですが、この体験後、私は昼間に原稿を書くようにしたら、データが消えることは無かったので、締切には滑り込みセーフで提出することが出来ました。


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