私の知人で警備会社で働いているKさん(仮名40代男性)から、聞いた話です。
Kさんの先輩にOさん(仮名60代男性)という方がいて、ビル関連の警備業務を担当していたそうです。
今回の話は20年以上前の話となります。
当時彼の担当してるビルの1つに小さな建物ではありましたが、小中学生用の学習塾がありました。
そこに通う生徒たちの行き帰りを見守っていたり、建物内に変質者などが侵入しないよう警備するのが彼の業務でした。
いつしか、塾に通う生徒たちの中には、Oさんに挨拶してきたり、親しげに話しかけてくる子供も出てきました。
その中の1人に、G君という小学校5年生の生徒がいたそうです。
彼は学習塾というよりは、スポーツ教室に通っていそうな年齢の割にはガッチリとした筋肉質な体型をしていたそうです。
「あ!Oさんだ!ウィース!!」
コミュ力も高かったのか、Oさんと顔を合わせるとG君の方から毎回元気に挨拶してきたそうです。
Oさんも、そんな人懐っこいG君に好意を感じるようになり、時には10分くらい雑談までするような間柄になりました。
Oさんが夜勤の仕事をしていた当時は、自分の担当しているビルを定期的に巡回する業務がありました。
ある日の夜勤時、彼が件の学習塾を巡回している時のことです。
小学生用の教室を覗くと、1組の机と椅子が倒れているのを目撃しました。
彼は(生徒の誰かがイタズラで倒したのかな?それにしても先生も帰る時に気がつかなかったんだろうか?)と思いながら、机と椅子を元通りにしました。
そして、他のビルの巡回を終え、少しだけ仮眠を取ったOさんは、3時過ぎに2回目の学習塾ビルの巡回に行ったそうです。
先程の小学生用の教室を覗くと、
Oさんは(さっき直したのに何でまた倒れているんだ!?もしかして、誰かいるのか?)と思い、建物内を徹底的に調べましたが、不審者が潜んでいる様子はありませんでした。
彼は薄気味悪く思いましたが(きっと、この椅子と机は俺が出た後に風で倒れたんだ!そうに違いない!)と強引に自分自身を納得させて学習塾ビルを後にしました。
そんな出来事から、2週間ほどが経った頃です。
Oさんは、学習塾でG君を見かけなくなったことに気が付いたそうです。
彼は、G君と仲が良さげで、よく挨拶を交わす男子生徒を呼び止めました。
「ねえ、最近G君を見ないけど、どうかしたのかい?」
彼の質問に対して、その男子生徒は表情を暗くしました。それどころか、泣くのを我慢してる様子だったそうです。
「……あのね。Oさん、
Oさんは予想外の回答に驚きました。男子生徒の話によれば、G君は放課後、友達と遊んで家に帰る途中で信号無視をした車に轢かれて、その日の夜に息を引き取ったそうです……。
しかも、G君が亡くなったのは、Oさんが学習塾で〝同じ机と椅子が倒れた〟という不可解な体験をした日と同じである事が分かりました。
あの日の夜に見た倒れた机と椅子は、ワンパクだった