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第17談 遺品整理


 今回紹介するのは、SNSを経由して私に寄せられた体験談となります。


 その方は、Sさんという30代男性の方でして、ある地方都市の遺品整理を請負う会社で働いていた時の話だそうです。


 ある日の事ですが、彼の会社に『20代前半という若さでありながら不慮の事故で亡くなった娘の部屋の遺品整理をしてもらいたい』 という内容の依頼が、その母親から入りました。


 会社が依頼を受けたため、Sさんは数名の先輩社員と一緒に業務を行っていたのですが、その最中に遺品の中から〝金色のブレスレット〟を見つけたそうです。


 それは、女神のような格好をした女性の装飾が施されており、その美しさに見惚れた彼は、しばらく無言でブレスレットを見つめていたそうです。


 彼は同棲している彼女の誕生日が近かったことから、 これを(バースデープレゼントにしよう)と思い、何とポケットにコッソリと仕舞い込んでしまいました!


 「少し早いけど、これバースデープレゼントだよ」


 その日の業務が終了して帰宅したSさんは、彼女にそう言って ブレスレットを渡しました。


 「こんな素敵な物をありがとう! 私、ずっと大切にするね!」


 彼女はとても喜び、その場でプレゼントされたブレスレットを装着しました。



 そんな出来事があって、数日経った頃です。


 Sさんと彼女が住むアパートの玄関前にダンボール箱が置かれていました。


 仕事の都合で、Sさんよりも早く帰宅した彼女は、不審に思ってその箱を開封しましたが、中身を見た瞬間、思わずギョッとしました。


 なぜなら、


 「きゃああー!」


 恐怖のあまり悲鳴を上げた彼女は、玄関前のダンボール箱をそのままにして


 Sさんは帰宅後、彼女からその話を聞いて、正直不気味に思ったそうです。


 しかし、この時の彼は男のプライドもあってか、彼女に弱い所を見せたくないという気持の方が強かったそうです。


 「きっと、変質者の悪戯だよ。同じような事が繰り返されるようであれば、俺から警察に相談するから、 落ち着いて」


Sさんは、そう言って彼女を諭しました。


更に、それから数日が経った頃です。


 彼は自宅の周辺に、


 その男女たちの共通点としては、紫色の帽子を深く被っているため目元が見えないことと、常に小声で何やらブツブツ呟いていることだったそうです。


 薄気味悪いと思ったSさんは、当初は〝彼ら〟に近寄らないように避けて帰宅していたそうです。


 しかし、そんな事が続いたある日の事、彼自身にも分からないのですが、恐怖心より好奇心が上回った精神状態になってしまったそうです。


連日、得体の知れない連中に付き纏われていたため、逆に恐怖心が麻痺してしまったのでしょうか?



(今日こそアイツらが何を言ってるか聞いてやろう!)


 そう思ったSさんは、バイト先に向かう際、ワザと紫衣装の彼らの前をゆっくりと通り過ぎることにしました。


 彼が、紫衣装の集団とすれ違った瞬間、1人の男性が 「......返せ!返せ!」 と呟いていたのを耳にしました。


 小声ながらも妙に迫力があったこともあったためなのか、先ほどまでの好奇心が嘘のように消えてしまったSさんは〝その呟き声〟が聞こえないフリをして、足早にその場を後にして職場に向かったそうです。



彼が会社に着いた直後の事です。


「S君はこの間、若い娘さんのアパートの遺品整理の現場にいたよな?その時に金色のブレスレットを見かけなかったか?」


 職場の責任者であるA所長に、そう問い詰められたそうです。


 「ど、どうして、ぶ、ブレスレットの事を知ってるんですか?」



 動揺したSさんは、反射的に本当の事を話してしまいました。


 「そうか!やはりお前が盗んでたんだな!?依頼者の遺品を盗むなんて何て事をしてくれたんだ!!先ほどその娘さんのお母様から『娘が神様からもらった大切なブレスレットがありません! 返してください!』とクレームが来ていたんだ!お前はクビだ!もう二度と来るな!」


 所長からそう怒鳴られたSさんは、その場で会社を解雇クビにされてしまったそうです。


 遺品を盗んでしまったのですから、これは当然の処置でしょう。


 その日の夜、遺品整理会社の先輩社員のKさんが彼の自宅まで盗んだブレスレットを回収しに来ました。


 ここまで来たら、逃げ場が無いと悟ったSさんは、彼女に正直に経緯を話してブレスレットを返してもらうことにしたそうです。


 「あんた!死んだ人の部屋から盗んだブレスレットをプレゼントにしたの!?最低!もう別れる!」


 彼女は、そう言ってブレスレットをSさんに叩きつけて泣きながら部屋を飛び出していきました。


 「K先輩。これ盗んだブレスレットです。本当にすいませんでした」


 彼は謝りながら、先輩社員に〝ソレ〟を渡しました。


 「……確かに受け取ったよ。お前さ、よりにもよってとんでもない物を盗んでしまったな!?これだけは本当にヤバい物だったんだよ!!」 


 先輩社員から、Sさんが聞かされた話によれば、先日亡くなった娘さんと両親は県内でもだったそうです。


 今回、彼が出来心で盗んだくだんのブレスレットは、教団に信仰心を認められた者にのみ授けられる特別なアイテムだったそうです!


 そして、Sさんがブレスレットを返した直後から、彼の家の周囲から紫衣装の不審者達の姿は見えなくなり、 不気味な荷物が置かれることも無くなったそうです。


 紫衣装の人物たちは、教団の関係者だったのでしょうか?


 S


 その真相は、今だに謎のままです……。


 ※作者注

 Sさんからの要望もあり身バレ防止のため、ブレスレットや教団の描写については、一部脚色してあります。

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