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第22談 深夜のエロ写真撮影

 これは、私がライターの仕事を通じて友人となった編集者のYさん(仮名30代男性)が提供してくれた話です。


 数年前まで、彼は成人向け雑誌を発行する某出版社に在籍しておりました。


 ある時、読者から投稿された野外での性行為の体験談を誌面上で再現するという記事の企画が決まりました。


 編集長が、その企画の担当者として白羽の矢を立てたのがYさんでした。


 今回採用された投稿内容は、とあるカップルが人気の無い深夜の山道で、性行為を愉しんだというものだったそうです。


 そのため、出版社の方でヌード撮影が OKな女優のA子さん(仮名20代) と、男優のBさん(仮名20代)を雇い、ロケ地であるG県の山中に深夜撮影に行く事になりました。


 Yさんや、A子さん、Bさん、カメラマンのC男さん(仮名50代男性)が、現地に到着したのは深夜2時前でした。


 時間帯や場所柄もあってか、周囲は真っ暗闇で静まり返っておりました。


 (薄気味悪いなぁ!早く撮影終えて帰りたいな)


 Оさんは、そう思っていました。 


 ……A子さんとBさんは流石はプロの役者だけあって、何も気にする様子を見せずに瞬く間に半裸姿となり、深夜の山道を舞台とした誌面掲載用のヌード撮影が始まりました。


 今回寄せられた投稿文によると、女性は目隠しをして性行為に及ぶという内容だったため、A子さんは事前に用意してあったバンダナを使って目を覆いました。


 そして、彼女とBさんは半裸のまま抱き合う状態となり、その様子をC男さんが撮影し、Yさんはレフ板を持ってサポートに回るという形で撮影が進行しました。


 A子さんは、悶えるような表情やポーズを取っていましたが、


 事前の打ち合わせでは、今回は写真撮影なので、お互い性行為をしているように見えるポーズを取る程度に留めるという話のはずでした。


 だから、こんなに彼女の体を揉む必要は全く無いのです


しかし、彼女を触る〝手の動き〟は一向に止まらず、秘部を触り続けておりました。


 我慢の限界が近づいた彼女は、Bさんに文句を言おうとしました。


 「いいよ!2人ともその調子!もう少しで撮り終わるからね!」 


 その直前、カメラマンのC男さんの声が聞こえたので、彼女はプロ根性で何も言わず我慢することにしたそうです。


そして、無事に撮影は終了したので、Yさん達は山の麓にあるファミレスで食事をすることになりました。


 店内の席に着いた途端、A子さんは斜め前に座ってるBさんの胸倉を掴みました。


 「おい!B!てめえ、調子に乗りやがって!撮影中に私のオッパイやお尻を触ったり揉んだりしてんじゃねーよ!打ち合わせと違うだろうが!?」


 彼女は、そう言ってBさんに怒鳴りました。


 深夜とはいえ、僅かにいた他のお客さん達は、彼女の過激な言葉を聞いてYさん達のテーブルに視線を向けました。


 しかし、恥じらいよりも怒りの気持の方が大きいのか、A子さんは全く動じずBさんを睨みつけたままです。


 「えっ?ち、ちょっと待ってよ!な、何のこと?俺は A子ちゃんに、そ、〝そんなこと〟してないよ!」 


 Bさんは、狼狽えるような感じで言いました。


「とぼけてんじゃねーよ!YさんとC男さんもBさんが私の身体を触ってたの見てましたよね?っていうか、2人とも何で止めてくれなかったんですか?」


 彼女は、Yさん達に同意を求めつつ非難しました。


 しかし、その言葉に彼らも首を傾げました。


 Yさんもレフ板を持ちながら2人の様子を見てましたが、Bさんが彼女の体を必要以上に触ってるようには見えなかったからです。


 「A子ちゃん、それは君の気のせいじゃないかな?Bさんは君の体を揉んだりするようなことしてないのは、 俺もC男さんも確かに見てたよ」


 「ああ、Y君の言う通りだよ。君らを撮影してた俺が言うんだから間違いない」


 2人は、彼女を諭すように言いました。


 「え!?で、でも!でも……分かりましたよ」 


 これ以上反論しても無駄と悟ったのか、彼女はBさんの胸倉から手を離すと黙って席に着きました。


 その後、4人は一言も話す事なく食事を済ませました。


 ファミレスを出た後、Yさんは車で3人を最寄り駅まで送る事になりました。


 場所の関係上、BさんとC男さんを先に降ろし、車中にはYさんとA子さんだけになりました。  


 「Yさん、私は撮影中は目隠しをしていたから、直接目撃してないけど確かに体を触られたんです!Bさんじゃないとしたら、?」


 A子さんは運転する彼に対して、そう言いました。


 その声は心なしか怯えてるようにも聞こえたそうです。


 彼は、その問いに対して何も答えられませんでした。


 彼女を触ったのは、山中に漂う死してもなお


 ちなみに、A子さんたちのヌード写真が掲載された成人雑誌をYさんから見せてもらいましたが、特に変な物は写っていませんでした。


 余談ですが、生者と体の交わりを求める色情霊の歴史は古く〝日本三大怪談〟の1つとされる『怪談 牡丹灯籠』に登場します。


 ここでは敢えて詳しく内容を説明しないので、興味を持たれた方は読んでみてはいかがでしょうか?


 皆様も恋人と甘いひと時を過ごす時は、深夜の山道は避けた方がいいかと思います。

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