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第23談 アナタ憑いてます……

 これは、私と知人と、その友人であるMさん(仮名30代男性)の3人でファミレスで食事した時に教えてもらった体験談となります。


 Мさんは、心霊現象の類いは全く信じておらず、周囲がそのような話題で盛り上がってるのを見ても、


 (そんなのどうせ嘘か、勘違いに決まっている!) 


 と、頭から決めつけている性格の人だったそうです。


 ある時、彼が取引先の女性担当者A子さん(仮名)と商談中の時です。


 「あの、ちょっと仕事とは関係ない話なんですが、少しだけ大丈夫ですか?」


 一通りの話が終わったので応接室から退室しようとしたMさんを彼女が 、そう言って呼び止めました。


「はい、何でしょう?」


彼がそう答えると、彼女は少し言いにくそうな様子で


「あの、突然こんな話をして驚かれると思いますが、それで、非常に言いにくいんですが、M


と言ったそうです。


「あははは!面白い冗談ですね! 申し訳ありませんが、僕はその手の話を一切信じていません。そういうジョークは他の方に話した方がいいですよ」


 彼は笑い飛ばして、A子さんの話を真面目に聞こうとはしませんでした。


 「いきなりこんな話をされても、そう思うのは当然かもしれませんが、私にはM。悪いことは言いませんので、 一度神社やお寺などで見てもらった方がいいのではないでしょうか?」 


 彼女はМさんに対して、そう忠告しました。


 今まで、こんな風に言われた事がなかったMさんは、 生まれて初めて霊の存在について、僅かながら恐怖を感じたそうですが、その気持を悟られたくありませんでした。


 「 お言葉ですが、A子さんの見間違いではないでしょうか?霊なんかいる訳がありませんので、ご心配なさらなくても大丈夫です! それでは失礼します」


 彼は作り笑顔で答えると、彼女の会社を後にしました。


 そして、この出来事は2〜3日もすると彼の頭の中からすっかり消えてしまいました。


 さて、それから半年ほど経った頃です。


 彼は友人の結婚式に出席することになりました。


 式が終わり帰宅しようとした彼は、背後から「ちょっと待ってください」と声をかけられました。


振り向くと、2次会で自分の席の近くに座っていた女性(以下、B子さん(仮名)とします)でした。


「はい、何か私に御用ですか?」


 「あの、実は、その......」


 声をかけたもののB子さんは、何やら次の言葉を考えている様子でした。


(ひょっとして、俺に好意を持って連絡先を聞きたいのかなぁ?)



彼女の顔が、自分好みのタイプだったのでМさんは内心ワクワクしながら、彼女の言葉を待っていました。


「あの、めでたい席の帰りにこういう事を言うのは失礼かもしれませんが、



B子さんが発したのは、彼の期待を裏切る言葉でした。


 彼女の話を聞いた瞬間、Mさんの脳裏には、すっかり忘れていた半年前のA子さんからの忠告が浮かびました。


 もちろん、目の前のB子さんとA子さんには、何の接点もありません。


 しかし、2人の証言が一致していた事に対してたので、彼は驚くと同時に恐怖を感じたそうです。 


 「そ、それはどんな女性ですか?もしかして髪の長い人ですか?」


 今までは心霊現象を一切否定してきた彼ですが、この時ばかりは恥も外聞もなくB子さんに〝見える霊〟の特徴を尋ねました。


 彼の問いに対して、女性は無言で頷きました。


 「それじゃ、私はこれで失礼します。悪い事は言いませんので、お寺や神社でお祓いしたほうが良いと思います」


 B子さんは、A子さんと同じような忠告をして、彼の前から立ち去りました。


 それから1〜2ヶ月が過ぎましたが、Mさんは仕事が忙しいこともあって、お寺や神社に自分の肩に憑いていると言われた女性霊の事は相談しませんでした。


そんなある日、通勤中の彼は車に跳ね飛ばされるという交通事故に遭いました!


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 この事故の直後、流石に彼は(もしかしたら霊はいるのかもしれない?)と少し考えを改めるようになったと、私に語ってくれました。


 しかし、彼はその後も神社やお寺に相談に行く事なく、現在も過ごしているらしいです。



 本人いわく(一度、事故に遭ったからもう大丈夫だろう)という根拠の無い自信を持っているようです。


 「Мさん、女性の霊に取り憑かれるような心当たりはあるんですか?」


 私は1番気になった事をМさんに質問しました。


 「……いや、それが全く無いんですよ。何でですかね?」


 彼は不思議そうな表情をしながら、答えました。


 これは、私の推測に過ぎないですが、Мさんに自覚が無いだけで〝何か〟理由があるのだと思います。


 例えば、彼の住まいが事故物件で、そこに憑いてた霊に魅入られたとか……? 


 この話を聞いた私は、今後Mさんの身にこれ以上の不幸が起きないよう祈る事しか出来ませんでした......。


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