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第31談 モノノケ?と出会った話

 今回は、友人から紹介された職場の後輩である縄村千賀子さん(仮名30代)から、取材した話をお伝えしたいと思います。


 彼女は幼少期に東北地方に住んでいたそうですが、 そこで不思議な体験をしたそうです。


 当時、縄村さんは父方の実家に住んでいたそうなのですが、その家は豪邸で庭もかなり広かったとの事です。


また、彼女の祖父は地元の有権者だったらしく、県内に土地を多数所有していたらしいです。


 さて、彼女が4〜5歳の頃です。


 庭で遊んでいると、たまに


 どうして人物と形容したのかを説明しますと、顔以外の部分は白装束で覆われているのですが、手があると思われる部分が衣服の上から盛り上がって踊っているように見えたからだそうです。


 まだ幼かった縄村さんは、その巨大な花の顔をしている人物たちを見る度に(怖い!)とは思わず、(楽しそう!私もお花さん達と一緒に遊びたい)と思ったそうです。


 そのため、仲間に入れてもらいたくて、彼(彼女?)達を見かける度に近寄っていったそうです。


 しかし、毎回いくら近づこうとしても、その人物たちとの距離は一向に縮まらず、気がつくと全員いつの間にか消えていました⋯⋯。


 また、この出来事とほぼ同時期なのですが、縄村さんは庭に設置されている蔵が古くて珍しい物がたくさんあったから、お気に入りの場所だったそうで中に入って1人で遊んでいることも多かったそうです。


 ある時、蔵の中で遊んでいたら、T


 さすがに、彼女も初めて彼を見た時は(この男の子、いつから蔵の中にいたの?)と驚きました。


「ねえ、一緒に遊ぼうよ!」


 彼は笑顔を浮かべながら、彼女に対してフレンドリーに話しかけてきました。


 「うん!!何して遊ぶ?」


 縄村さんも子供だったので、その一言で気を許して遊ぶ事になりました。


 それからというものの2人は、蔵の中でお絵描きをしたり、おままごとで遊ぶようになったそうです。


そんなある日の夕飯時に縄村さんの母親が、


「そろそろご飯よー!家に戻りなさい!」


と彼女を呼びに蔵に入ってきました。


「今、お友達と遊んでるから、後でー!」


 彼との遊びに夢中になってた縄村さんは、母親に夕飯を後回しにしたいと伝えました。


「ねえ、お友達なんてどこにいるのよ?」


 しかし、母親は不思議そうな顔して首を傾げながら、彼女に尋ねたそうです。


 その言葉を聞いて後ろを振り返ると、先程まで⋯⋯。


 それから数年後。


 祖父は事業拡大のため、庭の敷地を半分以上売却してアパートを建てることに決めたそうです。


 その際、彼女のお気に入りの蔵も取り壊されてしまいました。


 アパートは完成したのですが、その作業を請け負った建築業者は相当ずさんな会社だったらしく、建てられたアパートには様々な欠陥があり、彼女の祖父や業者は訴えられて裁判沙汰にまで発展したそうです。


 縄村さんは、大人になってからアパートの騒動の事を母親から聞かされて知りました。


  「⋯⋯あの日、蔵の中で出会った不思議な男の子は、長年家を守ってくれた座敷童子みたいな存在だったような気がします。お祖父ちゃんが欠陥アパートで訴えられたのも、棲家である蔵を壊されたから、あの子が怒ったからなのかもしれないですね」


 そう言って、縄村さんは話を纏めました。


 「なるほど、座敷童子ですか。もしかしたらお祖父様が地元の有権者だったのは、座敷童子のおかげかもしれませんね。所で白装束姿の百合の花の顔した人物については、どう思われます?」


 私は、最後に気になった事を質問しました。


 「座敷童子の仲間である花の精だったのかもしれません。ほら、子供の頃は妖精とか見えるって話聞きません?小学校になってからは一切見なくなりましたし」


 取材を終えた私は、彼女が遭遇したという〝男の子〟や〝百合の花の人物〟は、純粋な子供だけにしか見る事の出来ない〝モノノケ妖怪〟だったのかもしれないなと思いました。


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