「学校を荷物の配送先に設定しないでもらえるかな……?」
「本っっっっ当にすみません!」
困惑する担任に頭を下げる生徒がそこにいた。
おかっぱのような違うような、そんなキッチリしているようなしていないような髪型の女子生徒――
放課後の職員室の呼びだされたのは実はかりなではない。違う生徒なのだが、その生徒が少しこう、訳ありの生徒というか問題児。その代わりとして、その問題児の保護者的な存在のかりながやってきたという訳だ。
受け取った荷物を持って、また頭を下げたかりなが音を立てぬように職員室から出て行く。
荷物を確認してみると、楽しく天に昇るブックスからの荷物だ。しかも結構分厚い。
「本……?」
まさかあいつが本なんて注文するだろうか? そう失礼なことを考えて宛名を見る。
――
間違い無く、問題児の名前だ。
八月二十八日生まれの高校二年生、十六歳。つまりかりなの同級生だ。更に言うと幼馴染だ。
あの星波が本を頼むとはどういうことだと、かりなは無遠慮に荷物を開ける。別に星波は気にしないし、代わりに受け取って頭も下げたのだ。開ける権利はある。
「えぇ……なにに使うの……?」
世界のおやつを掲載した図鑑が一冊入っていた。パラパラページをめくると世界各国のおやつの写真とレシピと解説が書いてある。
「お菓子作りに目覚めたぁ? いや無い無い。星波に限ってそんなことは無い!」
まるで自分に言い聞かせるように声を出す。
すれ違う生徒が危ない人を見るような目で見てくるが気にしない。
星波が問題児である所以は、途轍もない面倒臭がりなのだ。なにをさせてもやる気がない。やる時はやるがやるまでに時間がかかる。面倒臭がりなのにまだ学校に残っているのだって、帰るのが面倒だからだ。
もういっそ学校に住もうかと言ったこともあったが、それはそれで面倒だということで無しになった。
危うくかりなも学校に住む羽目になるところだったのだ。
そんな極度の面倒臭がりの星波が本を買ってどうしたというのだろうかという疑問と本を持って、かりなは星波がだらけている教室へと向かうのだった。