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よろず探偵事務所にて。④



◇◇◇


「お茶のおかわりをどうぞ」


 男二人しかいない、この室内にて。

 突然、右隣から女性の声。湧水のように透き通った魅力的な声色だった。聞き覚えがあった僕は声の主へ振り向く。


「あれ、〈受け子さん〉!いつから、居たんです?」


 僕の言葉に、いつものようにただ微笑むだけの彼女。その微笑みは、何処となく人間臭さがない。いつもの事だけど。

 そんな考えをしているとは露知らずの受け子さんは、手前に置いてある湯呑み茶碗を手に取り、無言で新しいお茶を入れ始める。


「いやぁ〜、すみません。案件話しに夢中になって気づきませんでしたよ〜」


「……いえ、大丈夫ですよ。どうぞ、温かい内にお召し上がりくださいませ」


 いつものように営業スマイルで対応した僕に、受け子さんは静かに席を外した。

(それにしても……いつから、居たんだろう?出入り口は一つしかないのに)

 ふと疑問が生まれつつ、思わず心の中で呟く。新しいお茶を淹れてもらった後、一口飲む。


「彼女は、修理に出していたからね。最近、動きが悪くて〈アオイ〉に頼んだんだよ」


「……アオイ、さんですか?」


 初めて聞く名前に、無意識にオウム返ししてしまった。

「あぁ!知らなくて当然だよ。だって……」


ーー 君の【御先祖】だからね


 またもや、意味不明な一言。これからする予定の〈僕の計画〉が脳内からぶっ飛びかけた。だが、すぐに切り替えて曖昧に返答して終了させた。

 ココでは、深入りしてはいけない。これは、絶対だ ーー


「さて、最後に〈派遣先の出入り口の地図〉と先程の〈ダイイングメッセージ〉の用紙を渡しておくね。

……宇宙。どんな時でも、


「はい!僕なら大丈夫ですよ!!

帰ってきたら、さっきのお土産のお店教えて下さいね〜♪」


 案件の資料を貰った僕は、明日から始まる案件の為に宿泊先のホテルへ向かった。

 頭の中に今でも過ぎる、あの言葉。


ー 天国 ◼️鬼 吸う 図書館の◼️◼️   涙 ー


 契約後に、不安が吹っ切れた今。内心これから始まるこの謎解きに楽しみにしている僕がいた。

 だが、この時は知らなかった……。

 今回の案件は、予想外の展開と難儀なことになるとは ーー




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