まだ、世界が混沌としていたころ――
光も影もなく、風も水もかたちを持たず、
ただ静寂だけが広がる、無の時代。
その静寂のなかに、ひとりの神が生まれました。
神は虚無に向かい、大地を創り、
その中心に一本の木を植えました。
それは、天と地とを結ぶ神木――命の木。
神は神木に祈ります。
「この大地をより良きものとせんため、
ふさわしき子を我に授け給え。」
祈りは聞き届けられ、神木は八つの実を結びました。
やがてその実は静かに裂け、
そこから八柱の子供神が姿を現しました。
神は彼らに、ひとつずつ音の名を授けました。
――エ、ヒ、カ、メ、ト、ホ、カ、ミ。
八柱の神々はそれぞれ異なる性と力を持ち、
人々からは「八王子」と呼ばれるようになりました。
神は八王子に命じました。
「仲睦まじく地上を治めよ。
そこに生きるすべてが、健やかにあれるよう、力を尽くしなさい。」
八王子は、長子エ王子を中心に力を合わせ、
この大地に秩序と恵みをもたらしていきました。
次世代の神々と世界の守護
時は流れ、八王子は思いました。
「この地を、さらに豊かに保ちゆくためには、
愛と慈しみをもって支える、新たな神々が必要だ。」
彼らは再び神木に祈りました。
「地上を愛し、命を慈しむ子を、どうか我らに。」
祈りはまたも届き、神木は八王子それぞれに五つの実を結びます。
その実より生まれしは、四十柱の子供神。
彼らは父母である八王子の志を継ぎ、
それぞれの役目を担って、世界を支える守護神となりました。
こうして、
創造神、八王子、そしてその子ら――
三代にわたる神々の系譜によって、
世界は平和と調和に満ちた時代を迎えたのです。