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「ほな、また、仕事でな!」

「ああ、また、お前も仕事復帰を皆で待ってるからなっ!」


 そう、二人の間でごくごく普通な会話を交わし、雄介の同僚である淳は病室を後にした。


 それとほぼ同時に雄介はずっと望がここにいたのが気になったのか、


「なぁ、先生、今日はずっとここにおったみたいやったけど……仕事あったんやろ?」

「え? あ、ああ、まぁ、まぁな……ただ、和也……あ、いや、梅沢さんが俺に仕事しないでここに居ろっていうから、ここに俺は居ただけで……別に……何もここに俺は用事はなかったんだけどな。……ってか、アイツのせいで今日は残業決定になっちまったんだけどっ!」


 そう、望は頭を掻きながら息を吐いた。


「そうやったんかぁ。で、先生、この前の返事は?」

「あ、えーと……」


 まさかここでいきなり聞かれると思ってなかった望は、気持ち顔を俯けて考えているとタイミングよく雄介の病室のドアが開かれた。


「望! 望! 仕事に戻らないとだろっ! 夜中になっちまうぜ!」


 またそのタイミングで現れたのは和也だ。


「はいはい……分かってますよ」


 そう言って、


「では、また……」


 そう、誤魔化すような感じに雄介に言うと、望は和也と一緒に病室を後にした。


 そして和也と望は自分の部屋へと戻り、


「……で、今日は仕事を放り出してまで俺が桜井さんの所にいなきゃなんなかったんだ? 早くその理由を話せよ」

「それは、分かってるよ……でも、約束は忘れてねぇよな? これは、望が言う桜井さんの件についてだしよ」


 和也の意味あり気な言葉にピクリと反応する望。


 確かに前に和也と約束していた。そうだ、雄介の脅迫事件について協力するから抱かせてくれという話をだ。


 そのことを思い出した望は深いため息のようなものを吐き、


「ああ、大丈夫だ……分かってるから」


 そう、言葉を返す望。

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