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「じゃあ、ちゃんと今日のことを説明するな」


 和也はそこで言葉を一旦切り、今日雄介の病室であったことを話し始める。


「まぁ、今日はさ、暇っていうか、気分転換のつもりで患者さん達の病室とか回っていたんだ。それで、桜井さんの病室に行ったら、たまたま面会の人が来ていて、一緒になって話してたんだよな。それで、ある話になって俺が『まだ、俺には奥さんも子供いませんよ』って言っただけで、急にその場の空気が変わっちまったっていうのかな? こうなんていうんだろ? 沈黙が流れたともいうのかな? 俺さ、そういう事には敏感なんだよな……でも、俺的には別に変なことを言った訳じゃねぇし。でもさ、俺のその言葉だけで、沈黙みたいなのが流れたんだぜ。前に何かあの二人の間にあったとしか思えないだろ? しかも、奥さんと子供って言葉でな」

「んー、まだ、それだけじゃあな……なんとも言えねぇよ。 要はあの今日来ていた桜井さんの同僚が、その脅迫文を桜井さんに送った犯人なんじゃないかって思っているのか? でも、それでは、あくまで動機にしかならないっていうのか、いきなり、その人を犯人扱いするのはおかしくないかな? まぁ、俺には少なくともあの二人は仕事場での同僚にしか見えなかったけど」

「まぁ、そうなんだけどさ……でも、俺的には気になったからさ。さっき、念の為に俺の知り合いである刑事の白井に電話しといたぜ。それと、この手紙も警察に渡しておくな」


 和也は望の机の引き出しを開けるとその手紙を手にする。


「とりあえず、これ、借りておくからなぁ。 何か手がかりになるかもしれねぇし、警察に提出しておくよ」


 和也はそう言うとその手紙をズボンのポケットへしまうのだ。


「ああ、うん……分かった。それは、お前に預けておくからよ」

「うん、任せておけよ!」


 そこで一旦和也は言葉を止めると、


「さて、後は望のこと抱かせてもらおうかな?」


 そう言うと和也は辺りを見渡すのだ。

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