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ー記憶ー61

 それと同時に二人からは笑みが溢れた。


 一人で食事をするよりも、二人で食事をするのは楽しい。だからなのか、自然と笑みが溢れてしまったのであろう。それとほぼ同時に、食事の挨拶をしたからなのかもしれない。


 珍しく今日は、望の方が雄介に話し始める。


 今日休んでいた雄介は、そう話をしてくる望の話を珍しく聞き手に回った。


 まずはもっとお互いのことを知った方が良いのかもしれない。


 だから今日は、望が話をし始めたのであろう。


 ますますお互いのことを知りたくなり、会話が盛り上がったようにも思える。


 今までこんなゆっくりと雄介と会話をしたことがなかった。寧ろ、二人にはそんな時間がなかった。と言った方がいいのかもしれない。


 しかし、望の話が切れた所で、雄介は朝望が言っていたことを思い出したのか、


「そういや、朝言っていたことってホンマの話なんか?」


 今日の朝、望はあることを雄介に言っていた。


 そう、


『一緒に住まないか?』


 と言う提案だ。


 望はその提案を恥ずかしくて雄介に言えずにいたのだが、望が出勤前にだけそのことについて伝わればいいとでも思ったのであろう。 だから、望が仕事に出勤する前に言ったことだ。


 望はその雄介の言葉に少し間を置いてから、


「……ああ、本当だ」


 そう顔を真っ赤にし、俯きながら雄介が作ってくれたご飯を口にし、誤魔化しながら答える。


「ホンマに?」

「ああ」


 そう確認するかのように聞く雄介。


「まぁ、そういう事なら、そうさせてもらうわぁ」

「ああ、うん……そうだな。 ごちそうさま……」


 望はその雰囲気に耐え切れなくなったのか、直ぐに「ごちそうさま」を言うとソファの方へと向かい、テレビを点けるのだ。


 雄介はそんな望の姿に「ま、ええかぁ」と独り言を漏らし、食べ残しがない食器を片付けるのだ。


 今日は望のことで気付いたことがあった。


 そう、望はこういう話は苦手だということだ。

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