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ー記憶ー86

 いや本当にこの中に居た人達は無事なんであろうか。


 とりあえず今雄介は消防士として、そこにいる訳ではない。


 今は先に望の事を心配しようかとでも思ったのであろう。


 ふと雄介は気付くと望の方は無傷ではありそうなのだが、顔や体は煤まみれで後に作動したスプリンクラーのせいであろう、せっかくの洋服もビショビショである。


「え? それよか、お前は大丈夫なん?」

「お、俺の方は……ゲホッっ! ゲホッゲホッ! 大丈夫だから……中の人を……」

「ん? ま、そうなんだけどな。 今日は俺は消防士じゃないんやし、今は望の方が大事やしな」

「え? あ、まぁ……そうだったな……」


 そう望は雄介に向かって微笑むのだ。 そして雄介は更に安全な場所まで望の事を抱き抱え新鮮な空気を吸わせに屋上へと出る。


 そこへ後から来た救急隊員が望の所へと来るのだ。


「大丈夫ですか? あれ? お前は確か……」

「……へ?」


 その言葉に雄介は振り向くとそこには同じ消防署で働く救急隊員がいた。


「え? ちょ、お前なんでここに?」


 雄介はその隊員の口を押さえると、その場に座らせ、


「え? ちょ、なんでお前がここに居んの?」

「え? ちょ、ウチにも消防車の要請があったんですよ! 丁度、救急隊の方も救急車が空いていたんでね。しかも、デパート火災って言ってたので、この辺の消防署には要請されているんじゃないんでしょうか?」

「うわっ! ちょ、ヤバっ!」

「今日は桜井さんはお休みじゃなかったんでしたっけ?」

「そうや、そう!」

「本当はデートだったんですか?」

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