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ー空間ー189

 望はそう言うと、手を合わせて「いただきます」と言い、雄介特製のチャーハンを食べ始める。


 しかし、雄介が作ったご飯を食べるのはいつ以来だろうか。もう、かなり食べていないような気がする。


 相変わらず、雄介が作る料理というのは美味しい。だけど望はその「美味しい」という一言をまだ口にできないようだ。


 そう、雄介の場合にはそういう風に褒めると調子に乗るのは分かっているからかもしれない。


 望は雄介に何も告げないまま、ご飯を食べ終える。


 そして、食べ終えると同時に席を立ち上がり、学会へと行く準備を始める。


 持ってきたスーツに着替え、ネクタイを結ぶ。


「もう、行ってまうんか?」

「俺は時間に余裕を持って行きたい人間だからな」

「ほなら、会場まで俺が送ってってやろうか?」

「昨日、俺は言ったはずだ。今日はお前は寝ておけってな」

「んー、ほなら、車使ってってええよ……電車で行くよりかはええやろうしな」

「あ、ああ……確かに電車だとこの辺に慣れてねぇから分からなくなってしまう可能性があるしな。車の方がいいのかも……」


 望がそう頷くと、雄介は部屋に車の鍵を取りに行く。


「ほい、鍵!」


 そう言うと、雄介は望に車の鍵を投げ渡すのだ。


「ああ……」


 望はしっかりと雄介から車の鍵を受け取ると、荷物を持って玄関へと向かう。


 雄介も望の後を追って玄関へと向かい、笑顔で望を見送る。


 そして、雄介は望に言われた通りに食器を洗った後、自分の部屋へと戻り、ベッドへと横になる。

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