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ー空間ー223

「違ぇよ。さっき、お前さぁ、ここに来る前にこの店が美味いって言ってたのにさ、今は自分が上手いようなこと言ってんじゃねぇか」


 その言葉に望が笑った理由が分かったような気がする。


「ああ、そういうことな。ほな、俺が作り方上手いことにしとこ……」


 雄介はそう言うと、お好み焼き作りに専念する。


 望はそんな一生懸命の雄介の姿を見上げる。


 恋人というのはどんな姿であろうとカッコいいと思えてしまう。この三日間は特にそうだったような気がする。そして今は前にもまして雄介が精神的にも体力的にも逞しくなったように思える。


 最初、あの事件の時、雄介は乗客全員を一人で助けた。いつも望の前ではヘラヘラしていることが多い雄介でも、人を助ける姿はいつもとは違う。真剣そのものだ。


 ただこうして雄介と平和に幸せに暮らしている中で、望は疑問に思い始めたことがある。


 確かに雄介は男性、いや、今は望にしか興味がないように思える。それでも見た目はカッコよくて性格も良くて恋人には一途な雄介に言い寄る女性はいないのか? ということだ。


 そんな話を雄介には一回もしたことがないような気がする。


「な、お前さぁ」


 そう言ったと同時に、お好み焼きが出来たのであろう。


「出来た!」


 と雄介は笑顔で言っていた。


「とりあえずな、同じもんを注文した訳やし、半分こしような」

「ああ……」

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