目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

ー雪山ー7

「僕はですね……スキーは一度も行ったことがないんですよ。しかも、僕の学校では中学の時に修学旅行っていうのか、二泊三日のスキー教室があったのですが、その日、運が悪いことに僕自身が風邪を引いてしまって、スキー教室に行くことができなかったんですよね。もし行けたとしても、まぁ、僕のことですから、骨折くらいはしていたかもしれませんけどね」


 そう言いながら裕実は笑った。


「でも、和也さんたちとなら、行ってみたいと思ってますよ。その時には和也さんが僕にスキーを教えてくれるんですよね?」


 裕実は照れながら和也に素直に言った。


「当たり前だろう。もう! お前の頼みなら俺が何でも教えてやるからさ」


 そんな和也と裕実のラブラブっぷりに、雄介も望もため息が出そうだった。


 だが、裕実や和也が楽しく話している反面、望は顔を俯かせたままだった。


 裕実の話でますますスキーができないということを言い出せなくなってしまったように感じた。裕実は余計なことを言っているような気がした。


 たまにではあるが、裕実の言葉はまるで人の心を読んだようなことを言っている時がある。それがまた自然と言っているのだから怖いところでもある。


「ま、まぁ……裕実も行きたいって言ってるんだし、今年はみんなで行ってみようよ」

「だよなぁ、たまには仕事のことを忘れてゆっくりしたいしなぁ」


 和也はそう雄介に言うと、今度は望の方へと振った。


「なぁ、望さ、パソコン使って調べておいてくれないか? 露天風呂があって、スキーができる所をさ」

「あ、ああ! おう! 任せておけって、後で探しておくからよ」


 望は笑顔で答えたが、どうやらまだ動揺しているらしく、言葉を詰まらせていた。


「後は調べて予約するだけだし、俺たちは風呂を貸してもらおうかなぁ? しかし、本当に久しぶりに望の家に泊まりに来た感じがするなぁ」

「……って、何で急に俺の家に泊まりに来ることにしたんだ?」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?