琉斗はその和也の質問に首を傾げていたのだが、和也のことを見上げ、
「お母さんの病気は望兄ちゃんが治してくれているの?」
「まさか、知らなかったのか? 望兄ちゃんが琉斗のお母さんの病気を治してくれるかもしれないってことをさ」
「んー、確かに、昨日、雄介おじちゃんが望兄ちゃんに『僕とお母さんのことよろしくお願いします』って言ってたけど……そのことだったの?」
「ああ……そういうことなんだよ。って、お前、まさか、意味が分かってなくて、昨日は望にお願いしますを言ってたのか?」
和也の質問に琉斗は申し訳なさそうに頭を俯かせる。
「なんだー、そういうことだったのかぁ」
和也は子供に対しても容赦ないようだ。自分の方が有利だと思ったのであろう。口先を上げ、ホッとしたような表情を浮かべたのだから。
これで琉斗のことを和也のペースに乗せることができたことで、二人の関係を修復できるというのを確信したのかもしれない。
「望兄ちゃんは琉斗のお母さんの病気を治すために、琉斗のことを預かることにしたんだ。だからさ……昨日、雄介おじちゃんが望にお願いした理由が分かっただろ?」
「うん!」
「なら、望兄ちゃんのこと嫌いなんて言わない方がいいんじゃねぇのかなぁ? 望兄ちゃんがお母さんの病気を治してくれなくなっちまうぜ……」
「うん! 分かった! もう、望兄ちゃんに嫌いって言わないって約束する!」
「じゃあさぁ、望兄ちゃんの所に行って、望兄ちゃんに謝ってこような。じゃないとダメだろ? 友達と喧嘩した時、仲直りをするには、謝ることなんだからな」
和也は優しく丁寧に説明をすると、琉斗の頭を撫でる。
「うん! 望兄ちゃんのとこに行って、僕、謝って来る!」
琉斗は裕実の腕から離れると真っ先に望がいる車へと向かい、車のドアを開けるなり望のことを見上げ、
「ごめんなさい! 望兄ちゃん! 僕とお母さんのことよろしくお願いします!」
だが望にとっては突然のことで、何が起きたのかさえ分からない状態ではあったのだが、とりあえず一瞬で和也達が何かしてくれたのであろうと思ったのか、
「あ、ああ……おう……」
と答える。 そんな風に納得した望に琉斗は安心したのか、その後からは笑顔で望の横の席に座るのだ。