それから、タイミングを見計らったように和也たちも車へと乗り込んできた。だが、琉斗が未だに望のことを見上げている姿が目に入る。
「和也ー、これは、どういうことだ?」
望は呆れたように和也に向かい、そう言った。望からすれば、琉斗が急に自分にべったりになった理由を知りたかったのだ。
「まぁまぁ、いいからー、いいから。って、よく分かったなぁ、俺が琉斗に何かをしたってことがー」
「こういうことできるのは和也しかいないだろー」
望がそう言うと、その言葉に反応したのは裕実だった。
「心外だなぁ。何で、僕じゃなく、和也がそう言ったんじゃないかって、望さんは言い切れるのかなぁ?って思ったんですけどー!」
裕実は笑顔でそう言い、どうやらふざけているようだ。
「……へ? ってことは、まさか、裕実が琉斗と俺との仲を良くしてくれたのか?」
「……んな訳ねぇだろー。俺が琉斗に言ったんだよ」
「だよな……」
望は納得したようだが、裕実はまだ不満げだ。
「でも、ヒントを与えたのは僕ですからねぇ」
「まぁ、確かに、そこはな……」
和也は望に話を向けながら言葉を続けた。
「まぁ、裕実がいなきゃ、二人を仲良くするきっかけはなかったのは確かだぜ。だから、裕実のおかげでもあるのは確かだからな……一番今回のことについて貢献できたのは裕実だと思うぜ……」
「そっか……裕実、ありがとうな」
いきなりの望からの感謝に、裕実は戸惑いながら答えた。
「と、とんでもないですよ。気にしないでくださいね」
「ああ……おう……」
二人はどうやら、こんな会話をすることに慣れていないらしく、ぎこちない様子だった。
そんな二人の間に割り込んできたのは和也だった。
「まったくー、二人してかたいんだよなぁ。別に友達同士なんだから……」
そう言いかけた和也だったが、
「でも、『親しい仲にも礼儀あり』って言葉がありますからねー」
「まぁ、裕実の言う通りだな」
二人にそう責められると、和也は舌打ちをして運転に集中し始めた。
そんな和也の姿を見て、望と裕実はクスクスと笑い合っていた。