そして望の家に到着すると、ちょうど琉斗をお風呂に入れる時間だった。
「和也ー、琉斗を風呂に入れてくれないか?」
「……へ? 俺が琉斗を風呂に入れるのかよー」
「俺は子供と一緒に風呂に入ったことがねぇんだよ。和也はこういうこと慣れてんだろ?」
望がそう頼むと、和也は首を傾げながら答えた。
「確かに、俺は子供の扱いには慣れてるけどさぁ、風呂には入れたことがねぇんだけど……」
「……へ? それじゃあ、お前をここに呼んだ意味がねぇじゃねぇかぁ」
「……って、俺は子供担当なのかよ」
そう一人、小さな声で突っ込む和也。
「ま、とりあえず、俺は子供を風呂に入れたことはねぇからな」
そんな望と和也のやりとりを聞いていた裕実は、ふと和也を見上げて言った。
「僕で良かったら、琉斗君のことをお風呂に入れますよ」
その言葉を聞いた望と和也の瞳が輝き、
「じゃあ、琉斗のことをお風呂に入れるのは裕実で決定な!」
和也はそう笑顔で宣言すると、今度は望の方に顔を向けて言う。
「ほら、俺たちが来て良かったじゃないかぁ」
「お前が自慢げに言うことじゃないだろーが……。今回のことは何もかも裕実のおかげだな」 「まったく……最近、望も言うようになったよなぁ」
「それは和也だからな」
「それって、いいように取っていいのか!?」
また笑顔で言う和也に対し、望は冷めた目で睨み上げた。
「調子に乗んな……。まったく、お前は褒めるとすぐに調子に乗るんだからよー」
「それが俺の取り柄」
「取り柄でも何でもないだろー。とりあえず、お前はうるさいから黙っとけ」
望は溜め息を吐きながらソファに腰を下ろした。そして、その視線の先には、先程お風呂場へ向かった裕実の姿が脱衣所の近くにあった。
「望さん!」
「ん? 何だ?」
いつもなら和也に声を掛ける裕実だったが、珍しく望に声を掛けてきた。
いったい何があったのだろうか。裕実は笑顔ではなく、助けを求めるような表情で望を見上げている。