これで望の中で疑問に思っていたことが解決できたということだ。
望はスッキリしたような顔をすると、
「そうだったのか。ならさ、琉斗が好きなお兄ちゃんからのお願いを聞いてくれるかな?」
望にしては珍しく琉斗に笑顔を見せると、琉斗は大きく首を縦に振り、
「分かった! 望兄ちゃんのことなら、言うこと聞くよ!」
「ありがとう……」
望は琉斗の頭を撫でてから言った。
「俺は雄介おじちゃんみたく、子供と一緒にお風呂に入ったことがないから、琉斗と一緒にお風呂に入れないんだよ。俺も本当は琉斗と一緒にお風呂に入りたいんだけどな……だから、裕実兄ちゃんとお風呂に入ってくれるか?」
望は不器用ながらも、子供に向けた優しい対応を見せた。多分、いつも和也が子供に接する様子を見ている影響だろう。
琉斗は望の言葉に少し考えた後、笑顔を向けて言った。
「うん! 分かった! 好きなお兄ちゃんを困らせたくないから、今日は裕実兄ちゃんとお風呂に入って来る!」
「よし! じゃあ、裕実兄ちゃんとお風呂に行っておいで!」
望は琉斗の背中を軽く押し、お風呂場へと向かわせた。その後、すぐに疲れたようにソファへと腰を下ろした。
その直後、和也が望の背後に立ち、
「望にしては子供に優しかったじゃねぇかぁ」
「あー、もー、うるせぇなぁ。琉斗が俺の方に来るようになったのはお前のせいだろー。まったく、どうやって琉斗を言いくるめたんだよ」
「別に大したことはしてねぇよ。多分な、昨日、望と雄介が話してたことを琉斗はきちんと聞いてなかったんだろうな。俺はただ単に『琉斗のお母さんは望が治してくれる』って言っただけだしよ」
「確かに……そのことは昨日、雄介と俺とで話してたけどさ」
「多分、大人の話だと思ってあまり詳しく聞いてなかったんじゃねぇの? 子供にしては難しい話だと思うしよ。だから、今日は琉斗にも分かるように『望は琉斗のお母さんを治してくれるお医者さんなんだよ』って言った時に、琉斗は目の色変えてたからな」
「そういうことだったのか……別に和也が琉斗に俺のことを何か吹き込んだ訳じゃなかったんだな」