「おい……何でもかんでも俺が琉斗に吹き込んだって思うなよな」
「ほら、やっぱりさぁ、和也だから、そう思っちまうんだよなぁ」
「俺だから……ってなんだよ」
和也は小さな声でそう突っ込んだ。その直後、どうやら琉斗と裕実がお風呂から上がったらしく、
「今、上がりましたー。望さん……毎回のようにお風呂借りてスイマセン」
「別にそんなこと気にしなくていいんだぜ。いつものことだしよ」
「でも……」
裕実は何か言いかけたのだが、
「それより、裕実も大変なのに琉斗のことをお風呂に入れてくれてありがとうな。これでおあいこだろ?」
望がそう言いながら裕実に笑顔を向けると、裕実も笑顔を返し、
「はい!」
元気な声で返事をした。
「ま、とりあえず……次、和也が入って来いよ」
「ああ、そうだな。んじゃ、俺が先に入らせてもらうぜ」
「おう!」
望は軽く手を振って和也を送り出した。
その後、今日は雄介がいないこともあって、裕実と和也は望たちの部屋の隣にある客間で眠ることにし、望と琉斗は望の部屋にあるベッドで一緒に寝ることにした。
寝ている間も、琉斗は望にべったりとくっつき、安心したように眠りについていた。
そして次の日の朝。
望と和也たちは目覚まし時計の音で目を覚ました。
和也は急いで階下に降り、朝食の準備を始める。
その時、玄関のドアが開く音がして、和也は警戒しながらキッチンで待っていると、そこに雄介が帰ってきた。
「あれ? 雄介……早いんじゃね?」
「って、お前らの方が遅いんちゃうんか?」
「……へ? どういうことだ?」
「どうもこうもあらへんやろー? もう、九時半やで」
「……え? えー!! 嘘だろ?」
雄介の言葉を聞いて、和也は壁に掛けてある時計を確認した。確かに、時刻は九時半を回っていた。
和也は瞬時に顔を青ざめ、勢いよく二階へと駆け上がった。まだ支度をしているであろう望たちに向かい、勢いよくドアを開けて息を切らしながら、
「望! 時間! 時間!」
和也はそう叫び、壁にある時計を指さして見せるよう促した。