そう和也に言われ、望は壁に掛けてある時計を見上げる。確かに和也の言う通り、時計は九時半を回っていた。
「……へ? ど、どういうことだ!? 俺が目が悪いだけじゃねぇよな?」
「そうだよ! もう、九時半回ってんだよ!」
望と和也が騒いでいると、雄介が二階へと上がって来た。
「望達……まだ、居たんかいな。ホンマ、時間とか大丈夫なんか?」
そんなまったりと話す雄介だが、和也達はまだ慌てた様子である。
そんな雄介を見た望は、安心したような顔で見つめてしまっていた。
きっと雄介が帰って来たことに安心しているのだろう。
一日ぶりの恋人との再会。そして望の恋人は危険な仕事をしているからこそ、恋人に会えるこの瞬間が幸せだったりするのだから。
「……望!」
そんな幸せな一瞬も、和也の騒ぎ声で現実へと引き戻されてしまったらしい。
「望! 聞いてんのかよ!」
「あ、おう!」
「どうすんだよー! 今から行っても診察はアウトだぞー!」
「分かってるよ」
だがこの時、望にしては珍しく迷いが生じているようだ。いつもの望ならきっとすぐに仕事に行く準備を再開している頃だろうが、望の口からは意外な言葉が出てきた。
「今日は……大丈夫だろ。親父に電話して休みにしてもらうように言えばいいだろ?」
「まぁ、望がそう言うんなら……って、俺達はいいけどさ。裕実はどうするんだ?」
そこまで言うと、和也はあることに気付く。
「望にしては珍しいよな……休みにしようってさぁ」
そう言う和也の顔はにやけながら、望のことを見つめる。どうやら和也は望が『休もう』と言った理由が分かったようだ。
「ならさぁ、琉斗預かってやるから、今日は二人でデートして来いよ。久しぶりなんだろ? 二人きりになれるのはさぁ」
やっと望は自分が言った言葉に気付いたらしく、
「あ、いや……いい! い、行くに決まってんだろ!」
「フフフー、そうやって、どもるとこを見ると、今日は雄介と二人きりでいたいんだろうな。いいって! 隠さなくてもさ……俺達の仲なんだからさぁ」
今まで黙っていた雄介だが、望の前まで来ると、