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ー天使ー38

「そうだな」


 とりあえず和也は気持ちを切り替えると、


「ほら、せっかくの機会なんだし、たまには二人でデートしてこいよ」

「って言いたい所だけどさ、今は流石にそんな気分にはなれないんだよな」

「そっか……」


 望は頭を下げた後、顔を上げて言った。


「やっぱ、今から病院に行くぞ! 俺には病院を休んでまでプライベートを楽しむなんてこと、出来ないからな」

「だな!」


 和也は望に笑顔を向けると、今度は雄介の方に顔を向けた。


「そういうことだからさ! 悪いな雄介……琉斗のことよろしく!」

「ああ、そうやんな。分かった……琉斗のことは俺に任しとき!」


 どうやら雄介も今の空気を読んだようで、琉斗の手を取ると、


「ほな、琉斗……幼稚園に行こうか」

「うん!」

「何言ってんだよー。俺達が琉斗を幼稚園に連れて行ってから、病院に向かうさ」

「何言ってんのは和也達の方やろ? 早よ病院に行かんとヤバいんと違ゃうの?」

「まぁ、そうだけど、雄介、歩いて幼稚園に行くのか? それと、お前は寝てねぇんだから、後は俺達に任せろよ」

「まぁ、確かに……今日は寝れてへんけどな」

「俺達は遅刻ついでなんだからよー」

「分かった……琉斗はお前達に任せるわぁ。ほんで、後で俺が琉斗んこと迎えに行けばええやろ?」

「ああ……」

「ほな、決まりな!」


 和也達は話をまとめると下へ降りて行き、ご飯も食べずに和也の車へ乗り込む。まずは琉斗の幼稚園へと向かった。


 ひとまず琉斗を幼稚園に送ると、和也達は病院へ向かう。流石の和也も、その道中は大人しくしていた。


 そして、病院に到着すると和也はいつも停めている駐車場へ車を止めた。


「いつまでも暗い顔したって仕方ねぇだろー。やっちまったことは仕方ねぇことなんだからよー」

「まぁな」


 望は気合いを入れるように立ち上がり、車から降りる。


 三人は足取り重く、最上階にある院長室へ向かう。


 望は先頭に立ち、院長室のドアをノックした。中から声がし、望は人がいるのを確認すると、ゆっくりと院長室のドアを開ける。

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