「そうだな」
とりあえず和也は気持ちを切り替えると、
「ほら、せっかくの機会なんだし、たまには二人でデートしてこいよ」
「って言いたい所だけどさ、今は流石にそんな気分にはなれないんだよな」
「そっか……」
望は頭を下げた後、顔を上げて言った。
「やっぱ、今から病院に行くぞ! 俺には病院を休んでまでプライベートを楽しむなんてこと、出来ないからな」
「だな!」
和也は望に笑顔を向けると、今度は雄介の方に顔を向けた。
「そういうことだからさ! 悪いな雄介……琉斗のことよろしく!」
「ああ、そうやんな。分かった……琉斗のことは俺に任しとき!」
どうやら雄介も今の空気を読んだようで、琉斗の手を取ると、
「ほな、琉斗……幼稚園に行こうか」
「うん!」
「何言ってんだよー。俺達が琉斗を幼稚園に連れて行ってから、病院に向かうさ」
「何言ってんのは和也達の方やろ? 早よ病院に行かんとヤバいんと違ゃうの?」
「まぁ、そうだけど、雄介、歩いて幼稚園に行くのか? それと、お前は寝てねぇんだから、後は俺達に任せろよ」
「まぁ、確かに……今日は寝れてへんけどな」
「俺達は遅刻ついでなんだからよー」
「分かった……琉斗はお前達に任せるわぁ。ほんで、後で俺が琉斗んこと迎えに行けばええやろ?」
「ああ……」
「ほな、決まりな!」
和也達は話をまとめると下へ降りて行き、ご飯も食べずに和也の車へ乗り込む。まずは琉斗の幼稚園へと向かった。
ひとまず琉斗を幼稚園に送ると、和也達は病院へ向かう。流石の和也も、その道中は大人しくしていた。
そして、病院に到着すると和也はいつも停めている駐車場へ車を止めた。
「いつまでも暗い顔したって仕方ねぇだろー。やっちまったことは仕方ねぇことなんだからよー」
「まぁな」
望は気合いを入れるように立ち上がり、車から降りる。
三人は足取り重く、最上階にある院長室へ向かう。
望は先頭に立ち、院長室のドアをノックした。中から声がし、望は人がいるのを確認すると、ゆっくりと院長室のドアを開ける。