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ー天使ー39

「君達か……今日は来なくても人は間に合ってるって、さっき電話で言わなかったかな?」


 どうやら今日、望達が遅刻したことに裕二は相当怒っているようだ。望達が裕二の前に立っているにも関わらず、裕二は望達のことを見ようとしない。


「分かってますが……やはり、先程、院長が言われました通りに、俺達は患者さんの命を守っている仕事をしています。だからこそ、休めと言われましても、いてもたってもいられず、今こうして病院に来ました。ですので、今からでもいいので、俺達を働かせていただけないでしょうか?」


 その望の言葉に裕二は溜め息をつき、やっと望達の方に瞳を向ける。


「本当に君は今日遅刻してしまったことを反省しているのかな?」

「当たり前です。今後、一切、こんなことしません。本当に今日は申し訳ございませんでした」


 望にしては珍しく裕二の前で頭を下げると、それとほぼ同時に和也や裕実も頭を下げる。


「まぁ、反省してるのなら、いいのだけど。ま、とりあえず今日は人が沢山いるから、望達は平気だよ。ただ、裕実君だけは新城先生について欲しいんだけどね」

「分かりました!僕は新城先生のところに行きますね」


 裕実はそう言うと急いで、颯斗がいると思われる診察室へ向かう。


 裕実が院長室を出て行った後、裕二は望と和也達を真剣な目で見上げる。


「さっき、望にチラッとは告げたんだけど。さっき望に告げたことは粗方嘘ではないんだよね」

「……へ?」


 裕二が何を言っているのかが分からない望と和也は目を丸くしながら裕二のことを見上げる。


「さっき、望には『今度遅刻したら病院を辞めてもらう』って言ったよね?」


 裕二は急に椅子から立ち上がり、窓へと向かって青い空を見上げる。


「それが粗方嘘ではないんだよね。辞めてもらうのではなく、今度、新しく個人病院を作る予定なんだ……春坂病院系列の病院をね。今度作るその病院を君達に任せることにしたいんだけど……。これだけ患者さんが沢山いると、患者さんに負担をかけてしまうことになる。病院に来るだけで半日待たされると、ゆっくり出来る暇が無いという訳だ。だから、治る病気もなかなか治らないだろ?」

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